今回のテーマは、「バイデン、トランプ、デサンティスーーかく戦う」である。米フォックス・ラジオは、
ワシントン・ポスト紙および米ABCニュースによれば、デサンティス知事(44)は、5月最終月曜日の戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)に当たる29日後に、故郷の同州ダニーディンで出馬表明の集会を開催することを予定しているという。
すでに出馬表明をしたジョー・バイデン大統領(80)とドナルド・トランプ前大統領(76)に、デサンティス知事が加われば、選挙戦は激しさを増していくだろう。では、3氏はどのように戦うのかーー。
「好感度」と「非好感度」の比較
バイデン大統領が21年1月に就任すると、米右派オンラインメディア「ブライトバート」や米フォックス・ニュースなどが、次期米大統領選挙の民主党大統領候補の本命は、カマラ・ハリス副大統領になると想定し、同副大統領を標的にして一斉にネガティブキャンペーンを展開した。特に右派のメディアは、ハリス副大統領の移民対応を集中的に攻撃して、彼女の支持率を下げることに成功した。現時点でもハリス氏の好感度は高くない。
バイデン大統領、ハリス副大統領、トランプ前大統領並びにデサンティス知事の好感度と非好感度を比較してみよう(図表1)。雑誌エコノミストと調査会社ユーゴヴの共同世論調査(23年5月13~16日実施)によれば、米国民はバイデン氏に対して47%が「好感が持てる」、50%が「好感が持てない」と回答し、「好感」が「非好感」を3ポイント下回った。ハリス氏に関しては、44%が「好感が持てる」、48%が「好感が持てない」と答え、「好感」が「非好感」よりも4ポイント低かった。
一方、同調査ではトランプ前大統領に対して「好感」が46%、「非好感」が49%で、バイデン大統領と同様、マイナス3ポイントであった。デサンティス知事については、「好感」が43%、「非好感」が39%で、プラス4ポイントの結果になった。
「好感」と「非好感」の差異に基づいて4氏を比較すると、好感度の高い順からデサンティス知事、次にバイデン大統領とトランプ前大統領、そしてハリス副大統領になる。共和党が24年大統領選挙で、高齢のバイデン大統領と好感度の低いハリス副大統領を結びつけて、「バイデンが死亡すれば、ハリスが大統領になる。バイデンへの投票はハリスに投票することと同じだ」と議論して、ハリス副大統領を再度、集中攻撃するのは明らかだ。
バイデン陣営がハリスの露出度を高めた理由
ハリス副大統領の好感度が低いのにもかかわらず、バイデン陣営はバイデン大統領が出馬表明を行った3分4秒のオンラインビデオの中で、ハリス氏を13回も登場させた。24年米大統領選挙の最重要争点となると言われている人工妊娠中絶や、現在直面している債務上限問題で、バイデン陣営はハリス副大統領を積極的に活用している。その背景には一体何があるのか。
キリスト教福音派を支持基盤とする共和党は、人工妊娠中絶反対の立場をとっているが、妊娠後何週目から中絶を原則禁止すべきかに関して、党内で意見集約が図れず、統一したメッセージを発信できないのだ。
デサンティス知事は、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を原則禁止する法案に署名した。共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長は、妊娠15週目以降の中絶禁止を支持した。トランプ前大統領は、東部ニューハンプシャー州で行われた米CNN主催の市民集会(23年5月10日実施)で、妊娠何週目から中絶を禁止するのかについて明確な態度を示さなかった。
これに対して、民主党は人工妊娠中絶容認で一致している。ただ、バイデン大統領はカトリック教徒であるが、人工妊娠中絶に対して容認の立場をとっているので、全面に出て議論しにくい。しかも白人男性だ。
米国の非営利団体「カイザー・ファミリー財団」の人種別人工妊娠中絶の調査(23年5月11日発表)によると、最も多いのが黒人女性の39%で、次いで白人女性の33%、ヒスパニック系女性の21%と続いている。バイデン陣営の狙いは、黒人女性のハリス副大統領を人工妊娠中絶容認派の「顔」にして、黒人、白人およびヒスパニック系の女性票を獲得することである。
さらに、ハリス副大統領の露出度アップには、共和党によるハリス氏への攻撃をかわす狙いがある。バイデン陣営は、ハリス副大統領の露出度を高めて、彼女に業績を作らせようとしているのだ。