2024年4月27日(土)

2024年米大統領選挙への道

2023年5月24日

デサンティスVS.性的少数者

 デサンティス知事は保守派の票獲得を狙い、性的少数者(LGBTQI+:Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Queer, Intersex)を標的にした「教育における親の権利」法案に署名した。この法案は、幼稚園と小学校において性自認(自分の性別を自分でどのように認識しているのか)および性的指向(異性愛、同性愛、両性愛)を巡る議論を禁止する法案であり、反対派から「ゲイと言わないで」法案と呼ばれている。デサンティス氏は、自身のツイッターに対象範囲を中学2年生まで拡張すると投稿した。

 また、同知事は「フロリダ州の公衆トイレ、更衣室、ロッカールームは生物学上の性別に基づいて設置されている」「永久に性器切除を禁止する」ともつぶやいた。「性の流動性」や「性の多様性」に反対するメッセージを強く打ち出して、トランプ前大統領から保守派の票を奪う意図がある。

 バイデン大統領がワシントンからG7(主要7カ国首脳会議)広島サミット出席のため日本に向かった5月17日は、「多様な性にYESの日」であった。同大統領は声明を発表し、「性の多様性」を認め、「同性愛者嫌悪」と戦う決意を示した。仮に本選で、「ウォーク(差別問題や人権問題等に対して意識が高いこと)な大統領」と見られているバイデン氏と、「反ウォーク」の立場をとるデサンティス知事の対決になれば、同性愛者に対する差別問題が主要な争点になることは確かだ。

デサンティスの頭の中「ウクライナよりも中国」

 ウクライナに米国の国益はないと発言し、物議を醸したデサンティス知事は、ウクライナ支援よりも中国に焦点を当てて、「中国共産党の影響力を止める」法案に署名した。この法案は、フロリダ州における中国共産党の土地購入を禁止したものである。

 エコノミストとユーゴヴの共同世論調査では、中国に対する感情に関して、米国民の38%が「敵」、34%が「親しみやすくない」と回答し、合計で72%が否定的な考えを示した。党派別にみると、共和党は78%、民主党と無党派は共に69%が中国に否定的であった。

 デサンティス知事は上記の米国民の感情を汲み取り、中国に最も厳しく対峙するリーダーというイメージを創り、反中国の共和党支持者から無党派層まで支持を拡大する機会を狙っていることは間違いない。

「強いリーダー」VS.「勝てる候補」

 2012年共和党大統領候補指名争いで、ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事(現在西部ユタ州連邦上院議員)は乱立する共和党候補の中で、自分がバラク・オバマ大統領(当時)に勝てる確率が最も高い候補であるとアピールして、指名を勝ち取った。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙の世論調査(23年4月11~17実施)によれば、「ドナルド・トランプ前大統領とロン・デサンティス知事のどちらが強いリーダーか」という質問に対して、24年共和党予備選挙に出向く可能性が高い共和党支持者の53%がトランプ前大統領、21%がデサンティス知事と回答し、同前大統領が同知事を32ポイントもリードした。

 しかし、「どちらがバイデン大統領を破る確率が最も高い候補か」という質問については、41%がデサンティス知事、31%がトランプ前大統領と答え、逆に同知事が同前大統領に10ポイント差をつけた。

 前回の米大統領選挙で南部ジョージア州の選挙結果を覆そうとした試み、米連邦議会議事堂襲撃事件を扇動した疑惑並びに機密情報持ち出しで、トランプ前大統領が次々に起訴されれば、デサンティス知事は共和党支持者に、「私はトランプよりもバイデンに勝てる確率の高い候補である」と強調するだろう。


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