今回のテーマは、「バイデンの『本当の敵』ーー米連邦最高裁」である。米連邦最高裁は6月29日、大学入試で黒人やヒスパニック系の志願者を優遇する措置を「違憲」とした。さらに翌30日、ジョー・バイデン米大統領が昨年、中間選挙投開票日の前に発表した連邦政府の学生ローン返済の一部免除措置を「無効」とした。2件の判決は、24年米大統領選挙にどのような影響を与えるのかーー。
大学入学選抜と人種
バイデン大統領は連邦最高裁の判決が出ると、早速ホワイトハウスで演説を行い、「大学入学選抜における人種は、決定的な要素ではなく、GPA(成績評価)やテストの点数など諸要素の1つである」と説明して、積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)を正当化した。
また、バイデン大統領は「米国には今でも差別がある」と3回も繰り返して、大学入学選抜における差別是正を訴えた。その上で、積極的差別是正措置を違憲とした連邦最高裁の判決に関して、「多くの人々をひどく失望させた」と述べて、「多様性は我々の強さであることを思い出す必要がある」と主張した。ホワイトハウスの記者団からの質問に対しては、同大統領は「正常な裁判所ではない」と言い切り、9人中6人が保守派判事である連邦最高裁が、正常に機能していないという認識を示した。
さらに、バイデン大統領は学生ローン返済の一部免除を無効とした連邦最高裁の判決について、「判決は間違っている」と語気を強めた。
世論の反応
しかし、世論は連邦最高裁による積極的差別是正措置「違憲」の判決について、バイデン大統領と異なった見方をしている(図表1)。
雑誌エコノミストとユーゴヴの共同世論調査(23年7月1~5日実施)によれば、この違憲判決に対して全体の46%が「強く支持」、13%が「いくらか支持」と回答し、「支持」の合計が59%に達した。「強く不支持」は18%、「いくらか不支持」は9%で、「不支持」の合計は27%になり、「支持」が「不支持」を32ポイントも上回った。
人種別にみると、65%の白人が「支持」、23%が「不支持」と答え、「支持」が「不支持」よりも32ポイント高かった。黒人は「支持」が44%、「不支持」が36%で8ポイント、ヒスパニック系は「支持」が45%、「不支持」が30%で15ポイント「支持」が「不支持」をリードした。白人に加えて、黒人およびヒスパニック系も、連邦最高裁の判決を支持しているのだ。
また、「大学はどちらの志願者の入学を認めるのか決定を下すとき、人種を考慮するべきか」という質問には、74%の白人、54%の黒人並びに60%のヒスパニック系が「考慮するべきではない」と答えた。こちらも白人と同様、黒人とヒスパニック系も大学入試で「人種を考慮するべきではない」という立場をとっている。