今回のテーマは、「なぜバイデンはトランプと支持率で競っているのか」である。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの全国世論調査(23年8月24~30日実施)によれば、来年11月の米大統領選挙において、与党民主党のジョー・バイデン大統領と野党共和党のドナルド・トランプ前大統領の一騎打ちになった場合、両氏の支持率は共に46%で互角であった。
バイデン大統領は、4回起訴されたトランプ前大統領に対して支持率でリードを広げることができないのだ。そこで本稿では、その理由を「経済」「次男ハンター氏」「ウクライナ政策」および「高齢」の4つの視点から分析し、その対策について述べる。
好調な米経済
バイデン大統領は9月4日の「労働者の日」の演説で、米国経済がコロナ禍から回復して好調を維持していると強調した。大統領就任後31カ月で、トランプ前大統領は547万人の新規雇用を創出したのに対して、バイデン大統領は1345万人の雇用を生んだ。特に、製造業においては80万人の雇用を作った。
地域別にみると、激戦州において雇用を伸ばしている。例えば、大統領就任から東部ペンシルベニア州では35万3300人、中西部ミシガン州では35万4700人、ウイスコンシン州では14万9700人、南部ジョージア州では41万2400人、西部アリゾナ州では26万5900人の雇用を創出した。
8月の失業率は3.8%に上昇したが、4%以下に抑えている。また、インフレ率は昨年の約9%から約3%まで下げた。バイデン大統領は演説で「バイデノミクスは機能している」と断言する。
好調な経済と支持率のギャップ
しかし、英誌エコノミストと調査会社ユーゴヴによる共同世論調査(23年8月26~29日実施)では、経済におけるバイデン大統領の「支持」は41%で、「不支持」の51%よりも10ポイント低い。経済動向については、米国民の19%が「良くなっている」、21%が「変わらない」、54%が「悪くなっている」と回答した。「悪くなっている」が「良くなっている」を35ポイントも上回った。
なぜ、好調な経済が支持率に反映されないのか。以下の点が指摘されている。
第1に、コロナ禍から有権者の経済に対する悲観的な意識が変わっていない。第2に、民主党は売り込みが下手である。第3に、有権者はバイデン大統領が直面している争点を「高齢」のレンズを通して否定的に見る。
好調な経済と支持率のギャップに関して、12年米大統領選挙でオバマ陣営の選対本部長を務めたジム・メッシーナ氏は、バイデン大統領が「バイデン政権の経済政策は機能している」と、有権者に訴え続けることが重要であると述べた。