今回のテーマは、「『トランプ度』とトランプ初公判」である。ドナルド・トランプ前米大統領の初公判の日が決定した。「裁判引き延ばし」戦略をとったトランプ氏弁護団の要求は通らなかった。
トランプ初公判は、共和党予備選挙にどのような影響を与えるのか。また、トランプ前大統領は、同時並行で進む裁判と選挙をどう乗り越えようとしているのかーー。
トランプとラマスワミ――2人の関係
トランプ前大統領を擁護する度合い、即ち「トランプ度」に基づいて、1回目の共和党大統領候補テレビ討論会に参加した8人の主要候補を分類してみた(図表)。
その際、「トランプ前大統領が有罪判決を受けても支持するのか」「トランプ前大統領が有罪判決を受けた場合、恩赦を出すのか」および「ジョー・バイデン大統領は合法的な大統領か」の3つの質問に対して、主要候補がどのように回答してきたのかに注目した。
さらに、テレビ討論会におけるトランプ前大統領に関する主要候補の発言を分析した。その結果、「トランプ度」が最も高いのは、38歳のインド系米国人の起業家ビベク・ラマスワミ氏であることが分かった。ラマスワミ氏の存在は、同前大統領にとってどのようなメリットをもたらすのか。
「トランプ度」を利用するトランプ
率直に言ってしまえば、トランプ前大統領は、ラマスワミ氏にスポットが当たり、彼が意見を代弁するので、テレビ討論会に参加する必要がないのだ。米紙ワシントン・ポスト(電子版)によれば、今回の討論会でラマスワミ氏は11分17秒討論し、共和党予備選挙における支持率で2位のロン・デサンティス南部フロリダ州知事の9分33秒を上回った。
加えて、テレビ討論会後に行われたエマーソン大学(東部マサチューセッツ州)の世論調査(23年8月25~26日実施)では、予備選挙に行く可能性の高い共和党支持者の27%が、ラマスワミ氏が討論会で勝利したと回答した。一方、デサンティス知事は21%で、ラマスワミ氏よりも6ポイント下回った。
「トランプ度」ナンバーワンのラマスワミ氏の勝利は、トランプ前大統領の勝利でもある。討論会不参加のトランプ氏は、デサンティス知事と直接戦わずに、勝利を得た訳である。
トランプ前大統領は、取りあえず自分の「擁護者」であり、「代弁者」でもあるラマスワミ氏にテレビ討論会を任せ、「どのように裁判を選挙戦略に組み入れていくのか」並びに「どうしたら選挙と裁判を融合できるのか」という最重要課題に取り組んでいくだろう。ラマスワミ氏が擁護者の役割を果たす限り、トランプ氏は討論会にエネルギーと時間を注ぐ必要がないのだ。