2024年5月6日(月)

2024年米大統領選挙への道

2023年10月8日

 今回のテーマは、「米下院議長解任劇と次期議長候補」である。ケビン・マッカーシー下院議長が10月3日、身内の共和党保守強硬派と民主党によって解任された。米国史上初の下院議長解任劇であった。その背景には共和党内の分裂がある。

 共和党の2024年米大統領候補指名争いで独走するドナルド・トランプ前大統領は、どのようにして同党を統一しようとしているのか――。

YayaErnst/gettyimages

MAGA共和党の分裂

 現在下院では野党共和党が221議席、与党民主党が212議席を占めている。共和党は身内から4人の議員が造反すると、過半数の218を獲得できない。今回のマッカーシー下院議長解任において、8人の保守強硬派が賛成に回った。

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)によれば、米議会の問題解決議員連盟(Problem Solvers Caucus)は、マット・ゲーツ下院議員(共和党・南部フロリダ州第1選挙区選出)が提出したマッカーシー氏解任動議が可決される直前に会議を開いた。2017年に設置された問題解決議員連盟は、超党派の穏健派64名で構成され、新型コロナ対策やインフラ、医療保険など米国が直面する問題の解決に取り組んできた。委員長は民主党と共和党から各1名が選出され、メンバーの人数は両党に均等に分けられている。

 その会議で、共和党が民主党にマッカーシー氏を解任しないように求めたという。しかし、民主党はその要求を受け入れなかった。

 民主党は脆弱なリーダーであるマッカーシー氏を救済し、貸しを作って、譲歩を引き出すという選択肢があったはずだ。にもかかわらず、民主党がマッカーシー氏解任動議に賛成した理由は、同氏がジョー・バイデン米大統領の弾劾調査を開始し、敵対的な姿勢を鮮明にしたからだ。

 今回のマッカーシー氏解任劇の中心的な役割を果たした共和党保守強硬派は、トランプ前大統領を支持する「過激なMAGA(マガ:Make America Great Again 米国を再び偉大にする)議員」である。一方、マッカーシー氏は「穏健なMAGA議員」である。MAGA共和党において、「過激なMAGA」対「穏健なMAGA」の対立構図が顕著になったと言える。

バイデンと民主党の思い

 バイデン大統領は9月28日、西部アリゾナ州で故ジョン・マケイン上院議員(共和党)と民主主義について、情熱的な演説を行った。演説の中で、同大統領は、「MAGA運動は民主主義の基本的理念を共有していない」と強調して、MAGAが民主主義を破壊するという認識と懸念を示した。

「過激」と「穏健」のMAGAの温度差は関係なく、バイデン大統領と民主党は、両者とも民主主義を脅威にさらしているMAGAと捉えているのである。マッカーシー氏解任賛成は当然であった。


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