2024年11月24日(日)

2024年米大統領選挙への道

2023年10月8日

「ゲーツの乱」

 マッカーシー氏解任の反乱を起こした「過激なMAGA」の代表的な存在である41歳のゲーツ下院議員は、財政規律と憲法尊重を掲げた反オバマ色の強い保守派の市民運動「ティーパーティー」の流れを汲む「フリーダム・コーカス(自由議員連盟)」のメンバーである。

 今年1月に行われた下院議長選出の選挙において、ゲーツ下院議員はマッカーシー氏選出を阻止しようと抵抗し、決着がつくまでに結局、15回目も投票が行われるという異例の事態を招いた。トランプ前大統領と近い関係にある同議員は、7回目の投票において、マッカーシー氏ではなく、トランプ前大統領に投票した。

 ただ、ゲーツ下院議員は共和党内では人望がなく、嫌われ者だと言われている。英誌エコノミストと調査会社ユーゴヴの共同世論調査(23年9月30~10月3日実施)によれば、共和党支持者における好感度は、マッカーシー前下院議長が「大いに好感が持てる」と「やや好感が持てる」を合わせると49%であるのに対して、ゲーツ下院議員は32%であった。同前下院議長よりも、17ポイントも低い。

 また、同調査では20年米大統領選挙でトランプ前大統領に投票した有権者において、マッカーシー前下院議長に対する好感度は、「大いに好感が持てる」と「やや好感が持てる」の合算が51%であった。一方、ゲーツ下院議員は37%で、こちらも同前下院議長に対して14ポイント下回った。

 ゲーツ下院議員は、マッカーシー前下院議長が、連邦政府閉鎖を回避し、自分の地位を守ろうとして民主党と組んで「つなぎ予算」を成立させたことに強く反発した。また、同議員は、マッカーシー氏が下院議長に就任してから8カ月も経過したが、バイデン大統領の次男ハンター氏を議会に召喚していない点に不満をあらわにした。

 さらに、メキシコとの国境管理を重視するゲーツ下院議員は、バイデン政権のアレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官が弾劾されていない点にも怒りを感じている。

 ゲーツ下院議員は、次の下院議長選挙に出馬表明をしていない。米紙ワシントン・ポスト紙(電子版)によると、26年フロリダ州知事選を狙っているという。共和党内で人気のない同議員は、下院議長のポストではなく、知事選で勝利を収め、保守強硬派のリーダーとして大統領選を視野に入れているのかもしれない。

次期下院議長候補

 トランプ前大統領は自身のソーシャルメディアを通じて、次期下院議長選挙で、自分に非常に近い59歳のジム・ジョーダン下院議員(共和党・中西部オハイオ州第4選挙区選出)を全面的に支持すると発表した。ジョーダン下院議員を利用して、MAGA共和党の分断を解消させる狙いがある。同議員は、フリーダム・コーカスの創設者の1人であり、下院司法員会の委員長を務めている。

 トランプ前大統領はソーシャルメディアの中で、ジョーダン下院議員が自分から民間人にとって最高の栄誉である「大統領自由勲章」を授章したことを紹介した。また、NCAA(National Collegiate Athletic Association: 全米大学体育協会)ディビジョンのレスリングで、2度のチャンピオンに輝いたと称賛した。

 ジョーダン下院議員は、米議会での記者会見において他の議員と異なり、上着を着用せずにワイシャツ姿と黄色のネクタイで登場することが多い。ロナルド・レーガン元大統領を支持した保守派は、黄色のネクタイを好んでした。ジョーダン議員は、エネルギッシュなアスリートで、保守主義を尊重する議員のイメージを発信している。


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