米中西部アイオワ州で行われた共和党党員集会で、ドナルド・トランプ前大統領は、51%の得票率を得て圧勝した。共和党は、「トランプ党」ないし「MAGA(Make America Great Again 米国を偉大に)党」であることが明確になった。
アイオワ州共和党党員集会におけるトランプ圧勝を導いた諸要素は何か。今後、共和党予備選挙でもそれらの要素が、トランプ前大統領を本選における共和党大統領候補に押し上げる原動力となるのか。仮にそうなった場合、本選でもそれらの要素がアドバンテージになるのか。
熱意の差
まず、トランプ圧勝の諸要素の1つに、トランプ支持者の「熱意」が挙げられる。アイオワ州共和党党員集会の直前に行われた米NBCニュース、米紙デモイン・レジスターとメディアコムの共同世論調査(24年1月7~12日実施)によれば、党員集会に出向く可能性の高い共和党員において、トランプ前大統領に対する熱意は88%(「非常に熱意がある」と「大いに熱意がある」の合算、以下同様)、ロン・デサンティス知事は62%、ニッキー・ヘイリー元国連大使は39%であった。トランプ前大統領とデサンティス知事の熱意の差は約20ポイント、ヘイリー元国連大使とは約50ポイントである。
3人の候補における熱意の差は、全国の共和党支持者を対象に行った英誌エコノミストと調査会社ユーガブの共同世論調査(24年1月7~9日実施)においても顕著に現れている。同調査が、トランプ前大統領、デサンティス知事ないしヘイリー元国連大使が、共和党大統領候補になった場合の熱意について尋ねたところ、61%が同前大統領に対して「熱狂的である」と回答した。
一方、デサンティス知事は20%、ヘイリー元国連大使は15%に止まった。トランプ前大統領とデサンティス知事との間には約40ポイント、ヘイリー元国連大使とは約45ポイントの差がある。
上記の熱意の差は、視聴者数にも現れている。例えば、1月10日にアイオワ州の州都デモインで同時間に行われたトランプ前大統領の市民集会と、デサンティス知事とヘイリー元国連大使の2人によるテレビ討論会の視聴者数である。双方とも生中継されたが、市民集会の視聴者数は430万人であったのに対して、テレビ討論会は260万人であった。
よほどトランプ前大統領にマイナス要素が出ない限り、デサンティス知事とヘイリー元国連大使は、これからトランプ前大統領との熱意の差を埋めることは、極めて困難であるとみてよいだろう。
トランプに対する忠誠心
次に、2番目のトランプ圧勝の要素として、忠誠心の差がある。トランプ集会に参加すると分かるのだが、トランプ支持者はトランプ前大統領に対して忠誠心が強い。彼らは、トランプ前大統領の言葉のみを信じるのだ。
筆者の選挙キャンペーンを観察してきた中では、こうした服従を思わせるような忠誠心の傾向は、バラク・オバマ元大統領やヒラリー・クリントン元国務長官の支持者には見られなかった。
トランプ前大統領は、これまでの演説の中で、「忠誠心」という言葉を繰り返して使い、支持者に忠誠心を植えつけてきた。それが、2021年1月6日に発生したトランプ支持者による米議会議事堂襲撃事件に影響を与えた可能性は排除できない。
今回のアイオワ党員集会において、米ABCニュースの出口調査では、「もしトランプ前大統領が有罪評決を受けても、大統領に適任か」という質問に対して、63%が「はい」、32%が「いいえ」と答えた。約6割が、トランプ前大統領に有罪評決が下っても、彼に忠誠心を表明し続ける考えを示している。