今回のテーマとして、「イスラエル・ガザ戦争は2024年米大統領選挙にどう影響を及ぼすのか」を選んだ。というのは、10月7日に発生したイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃は、24年米大統領選挙におけるジョー・バイデン大統領の選挙戦略に影響を与え続けるからである。中でも再選に不可欠な若者とアラブ系の支持獲得に苦戦を強いられる可能性が大である。バイデン大統領は若者とアラブ系の支持を失っているからだ。
では、若者はイスラエルとハマスの軍事衝突をどのように捉えているのか。また、アラブ系は軍事衝突をめぐるバイデン大統領のどのような対応に不満を抱いているのか――。
パレスチナへの人道支援と若者票
バイデン大統領は、女性、黒人、ヒスパニック系(中南米系)、若者およびLGBTQIA+(性的少数者)から構成される「異文化連合軍」の票の組み合わせによって、再選を目指す選挙戦略を立てている。若者は、異文化連合軍の一角を成す。
ところが、ハマスのイスラエル攻撃後に行った米公共ラジオ、公共放送およびマリスト大学(東部ニューヨーク州)の共同世論調査によれば、Z世代とミレニアル世代におけるバイデン大統領の支持率は41%、不支持率は48%で、「不支持」が「支持」よりも7ポイント高かった。
イスラエルとハマスの戦争に対するバイデン大統領の対応に関しては、「支持」と「不支持」の差がさらに開く。Z世代とミレニアル世代の38%が「支持」、59%が「不支持」を答え、「不支持」が「支持」を21ポイントも上回った。
また、同調査ではハマスによる攻撃に対するイスラエルの軍事行動に対して、Z世代とミレニアル世代の48%が「やり過ぎる」、19%が「少な過ぎる」、30%が「ちょうど良い」、4%が「分からない」と答えた。10月の調査と比較すると、「やり過ぎる」が11ポイント上昇した。若者の約5割は、イスラエルのハマスへの攻撃は過剰反応であると捉えている。
さらに、「中東での現在の戦争が心に浮かんだ時、イスラエル人とパレスチナ人のどちらに同情するか」という質問に対して、全体では61%がイスラエル人、30%がパレスチナ人と回答した。しかし、Z世代とミレニアル世代は47%がイスラエル人であるのに対して、50%がパレスチナ人と答え、パレスチナ人がイスラエル人よりも3ポイント高かった。
これらの世論調査の結果は、再選を狙うバイデン大統領に警告を発しているとみて間違いない。
過去の事例を挙げてみよう。16年米大統領選挙で民主党大統領候補であったヒラリー・クリントン元国務長官は、若者の熱烈な支持を得ることができず、その結果、異文化連合軍を組めなかった。それが敗因の一つになった。
確かに、筆者が参加した中西部アイオワ州デモイン、ミシガン州デトロイト、オハイオ州クリーブランド、東部ニューハンプシャー州コンコード、ペンシルベニア州フィラデルフィア、南部バージニア州フェアファックス並びに西部カリフォルニア州サンフランシスコのクリントン選対では、オバマ選対と比べて、若者の存在感が薄かった。
同じように、バイデン大統領のパレスチナ人への対応を支持しない若者が異文化連合軍に参加しないことも考えられる。従って、パレスチナ人への人道支援強化は、バイデン大統領にとって若者を引き留めるという極めて重要な意味を含んでいるのだ。