仮にジョージア州の裁判が生中継されれば、トランプ前大統領は法廷を選挙キャンペーンの「舞台」に変えるだろう。法廷を新たな「トランプ劇場」にして、裁判はジョー・バイデン大統領が米司法省と連邦捜査局(FBI)と仕組んだ「魔女狩り」や「政治的迫害」の場として演出するだろう。現在主張しているように、自分は「闇の国家」の犠牲者であり、裁判はバイデン大統領による「選挙介入」であると訴える。
トランプ前大統領は法廷で「怪演」を見せて、トランプ支持者の団結を固めることは間違いない。この裁判を選挙戦略に組み入れた前代未聞の戦略は、同時にリスクも伴う。トランプ前大統領が法廷で裁判官を口頭で攻撃して「醜態」をさらせば、鍵を握る無党派層や郊外に住む女性の票が、彼から離れていく可能性が増すからだ。たとえ、「熱意」があり、トランプ前大統領に対する忠誠心が高く、前大統領と心理的に一体化しているトランプ支持者の団結を強めるとしても、上記の有権者を逃した場合は、当選が危うくなる。
法廷の「トランプ劇場」化
2020年米大統領選挙は、新型コロナウイルス禍で行われ、トランプ前大統領とバイデン大統領の新型コロナウイルスの犠牲者や、その家族、友人への対応や思いが選挙結果に、少なからず影響を与えた。トランプ前大統領は、コロナ禍で大規模集会を開き、強いリーダー像を演出したが、感染を拡大させた。一方、バイデン大統領は選挙インベントを控え、開催する場合も小規模集会であった。さらに、人間の死や悲しみを理解し、寄り添うリーダーシップを発揮した。
24年米大統領選挙では、トランプ裁判が予定通り投開票日前に開始された場合、トランプ前大統領が「トランプ劇場」化した法廷で見せる「怪演」と「醜態」が、選挙結果に影響を及ぼすかもしれない。トランプ劇場は、従来の各地の集会場から――生中継されれば――その舞台は一気に全国へと拡大する。