2024年11月21日(木)

2024年米大統領選挙への道

2024年1月31日

トランプの「新たな連合軍」

 トランプ前大統領は、2016年米大統領選挙のときに使用した1960年代の市民権活動家オスカー・ブラウン・ジュニア氏の「ヘビ(The Snake)」の詩を今回の選挙でも持ち出し、支持基盤に訴えている。親切な女性が凍ったヘビを家に持ち帰り、はちみつやミルクを与え、世話をした。ところが、ヘビは回復をすると、この女性を襲ったというストーリーである。

 同前大統領は、メキシコとの国境を越えて不法入国する移民には、犯罪者や精神病を患った移民が多くおり、彼らをヘビに喩えて、「不法移民はわれわれを裏切る」というメッセージを送っている。

 白人中心のトランプ支持者の中には、このメッセージを素直に受け入れた者もいた。また、自分たちが声にしなかったことを、トランプ前大統領が声にして聞かせた。

 一方では、バイデン大統領が予算を執行してメキシコとの「国境の壁」建設を許可したと、ヒスパニック系(中南米系)にメッセージを発信している。前述したエコノミストとユーガブの共同世論調査では、ヒスパニック系におけるバイデン大統領の支持率は、支持が38%、不支持が51%で、支持が不支持を13ポイント下回った。

 ちなみに、2012年米大統領選挙において、バラク・オバマ元大統領のヒスパニック系の得票率は71%、16年大統領選挙では、ヒラリー・クリントン元国務長官の同系の得票率は66%であった。これに対して、20年大統領選挙でバイデン大統領の同系の得票率は59%であった。オバマ元大統領と比較すると、12ポイントも下回った。24年大統領選挙では、バイデン陣営はヒスパニック系の人口が占める割合が高い激戦州アリゾナやネバダで、オバマ元大統領を登場させ、同系の支持獲得を狙うだろう。

 2016年と20年の米大統領選挙で、トランプ前大統領は白人労働者、退役軍人、キリスト教福音派および白人至上主義者といった白人中心の「単一文化連合軍」で戦った。24年大統領選挙では、この連合軍にヒスパニック系を加え、「新たな連合軍」を形成した。トランプ前大統領は、バイデン大統領の女性、黒人、ヒスパニック系および性的少数者を柱とする「異文化連合軍」から、ヒスパニック系を奪い、同連合軍を切り崩す戦略に出た。

 24年米大統領選挙は、米議会議事堂襲撃事件でトランプ前大統領に有罪評決が下されるのか、トランプ前大統領がバイデン大統領の「異文化連合軍」に穴を開けることができるのか、この2点がかなり選挙結果を左右しそうだ。

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