2024年12月10日(火)

2024年米大統領選挙への道

2024年3月15日

 ドナルド・トランプ前大統領は3月12日(現地時間)、共和党大統領候補指名争いで過半数の代議員数を獲得し、同党大統領候補指名を確定した。2008年民主党大統領候補指名争いでは、バラク・オバマ元大統領とヒラリー・クリントン元国務長官との対決は、同年6月まで延びた。08年と比較すれば、トランプ前大統領の指名確定は、「スピード決着」と言える。

 しかし、トランプ前大統領には課題があることも明確になった。また、共和党大統領候補指名争いで快進撃を続けたトランプ前大統領だが、もし本選で敗れるとしたら、一体何が「トランプ敗北」をもたらす条件になるのか――。

(REUTERS/Alyssa Pointer/aflo)

「ヘイリー支持者・無党派層・郊外に住む女性」

 ニッキー・ヘイリー元国連大使は、リベラル色の強い東部バーモント州で約50%の得票率を得て、トランプ前大統領に勝利した。一方、南部アラバマ州など保守色が濃い州では10%台に止まったが、他州では約2割から4割の票を得ている。

 ヘイリー支持者は、「反トランプ色」が強い。例えば、ABCニュースが共和党予備選挙の最中に行った南部ノースカロライナ州での出口調査では、ヘイリー元国連大使以外の候補が共和党大統領候補になった場合、80%がその候補に「投票しない」と回答した。

 また、エディソンリサーチの南部バージニア州での出口調査では、「もしドナルド・トランプが有罪評決を受けた場合、あなたは彼が大統領にふさわしいと考えますか」という質問に対して、37%が「いいえ」と答えた。このうちの80%がヘイリー支持者であった。

 さらに、米CNNが実施した南部サウスカロライナ州の出口調査では、31%が「もしトランプが共和党候補になったら不満足」と回答した。そのうちの96%がヘイリー支持者であった。同調査では、無党派層の62%がヘイリー元国連大使に投票し、37%のトランプ前大統領を25ポイントも上回った。

 これらの数字は、何を意味しているのだろうか。2020年米大統領選挙では、ヘイリー元国連大使と支持者はトランプ前大統領を支持した。しかし、今回はヘイリー支持者がトランプ前大統領に投票をするのかは不透明だ。

 24年共和党予備選挙でヘイリー陣営は、トランプ前大統領の弱点を無党派層と郊外に住む女性たち(suburban women)にあるとみていた。それは今でも変わらず、トランプ前大統領は、ヘイリー元国連大使の支持者と無党派層や郊外に住む女性たちから確固たる支持をまだ得ていない。

 本選で勝敗の鍵を握るのは、熱狂的なトランプ支持者や民主党のリベラル派の支持者ではなく、正に今、トランプ前大統領が取り込めていないヘイリー支持者や無党派層および郊外に住む女性たちである。

ヘイリー支持者にラブコールを送るバイデン

 エディソンリサーチが行ったバージニア州での出口調査では、「人工妊娠中絶禁止の連邦法に賛成しますか」という質問に対して、54%が「反対」と回答した。そのうち52%がヘイリー元国連大使の支持者であった。バイデン大統領は2022年6月に人工妊娠中絶の権利を覆した米連邦最高裁の判決に反対し、女性の「選択の権利」を前に押し出して、ヘイリー支持者も念頭に人工妊娠中絶の権利復活をアピールしている。

 この1年間の内政と外交について米国民に述べる「一般教書演説」では、バイデン大統領は人工妊娠中絶の権利擁護を主張したのち、「自由が投票用紙に記載されている」と強調した。人工妊娠中絶の権利と、米国人が重視する文化的価値観である「自由」を結び付けて、ヘイリー支持者を含めた女性有権者に訴えかけている。

「ヘイリー支持者・無党派層・郊外に住む女性」の票獲得は、バイデン大統領とトランプ前大統領の双方にとって、最重要課題である。ヘイリー支持者は本選で、バイデン大統領に投票しないかもしれないが、投票所に出向かない可能性がある。これは、トランプ前大統領にとって共和党支持者の票を減らすことと同等だ。


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