2024年11月22日(金)

Wedge2023年9月号特集(きしむ日本の建設業)

2023年8月20日

 「鉄筋工はとりわけ職人の数が必要な仕事です。しかし働き手がいない。求人誌やネット広告、バスまで走らせ200万円以上使って募集したこともありましたが、ほとんど反応がなかった」

 仕事柄、できれば元気な若者が欲しい。だが、若者は朝の早い仕事を嫌う。

 会社が請け負う現場の多くは都心部にある。午前8時の朝礼には絶対に遅れられない。職人たちは午前5時には会社に集合し、現場に向けて車で出発する。交通渋滞を避け、現場に到着するためだ。

 仕事はたいてい定時の午後5時には終わる。ただし、夕方の渋滞に巻き込まれ、八王子までは2〜3時間を要してしまう。

 職人たちの賃金は、働いた日数に応じて支払われる「日給月給」が基本だ。箕輪さんの会社では、未経験者で1日1万2000円からスタートする。

 「拘束時間が長く、休みは日曜だけ。仕事はきつく、夏の現場は暑くて冬は寒い。それで1万2000円ですから、若い人たちが『エアコンの効いたコンビニでバイトした方がマシ』と考えるのも仕方ない」

 箕輪さんは2015年からフィリピン人実習生を受け入れ始めた。会社には現在、9人のフィリピン人に加え、7人のインドネシア人実習生がいる。合わせて16人で、日本人社員の11人よりも多い。箕輪さんはこう話す。

 「実習生は皆、20代と30代。日本人は28歳が1人いますが、他は全員が40代以上です。実習生は日本人と違ってほとんど仕事を休まない。しかも最低でも3年間は確実に働いてくれる。日本人だと3年続く人は珍しいですから」

給与明細はもらえず
リビングで共同生活……

 外国人実習生の数は22年末時点で32万4940人に達し、前年から5万人近く増えている。コロナ禍前の19年の約41万人を超えるのも時間の問題だろう。最近になって政府は技能実習制度を「廃止」する方針を打ち出したが、制度の名称が変わっても「実習生」の受け入れが止まるわけではない。そんな実習生の2割以上が就労し、業種別で最大の受け入れ先となっているのが建設業界なのである。

 実習生には「低賃金の労働力」というイメージが強い。事実、実習生は最低賃金レベルで雇える。また、建設業の実習生には、職場での人権侵害も繰り返し問題になっている。実習制度「廃止」のきっかけも、昨年1月に岡山県の建設会社で発覚したベトナム人実習生への暴行事件だった。実は、ダホトイさんも昨年9月に来日し、最初に働いた会社でひどい扱いを受けた。

(続きは下記リンク先より)

全文は『Wedge』2023年9月号に掲載されております。雑誌はアマゾン楽天ブックスhontoでもご購入いただくことができます。
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Wedge 2023年9月号より
きしむ日本の建設業 これでは国土が守れない
きしむ日本の建設業 これでは国土が守れない

道路や橋、高層ビルに新築戸建て……。誰もが日々、当たり前のように使うインフラや建築物にも、それらをつくり、支える人たちがいる。世は「働き方改革」全盛の時代─。その大波は建設業界にも押し寄せる。だが、目先の労働時間削減だけでなく、直視すべきは深刻な人手不足や高齢化、上がらぬ賃金などの課題だろう。インフラや建築物は、まさに日本の「機能」であり「国土」そのものでもある。“これまでの”当たり前を、“これからも”続けていけるのか─。その分水嶺にある今、どのようにして国土を守っていくべきか、立ち止まって考えたい。


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