洋上風力発電事業を巡る疑惑がメディアで取り上げられている。第1回の大規模洋上風力発電設備の入札結果が21年12月に発表された後、落札できなかった風力発電事業者・日本風力開発が議員に働きかけ、不透明な資金を提供したのではないかとして捜査されている。
今年6月末に締め切られた2回目以降の入札では自社が落札できるよう、入札審査の評価基準を変更する狙いだったとされるが、価格条件以外の評価基準変更による落札価格の上昇も狙ったものだろう。
太陽光、風力発電などの再生可能エネルギー(再エネ)への事業投資は、かなり特殊だ。初期の設備投資後操業に係る費用はほとんどないが、収入は再エネの導入を支える固定価格買取制度(FIT)により保証されている。
通常の事業との比較ではリスクが少ない。リスクが小さい事業であれば、収益率も下がるはずだが、再エネ事業者が設備を売却するために公表しているデータを見る限りでは収益率は結構高い。
要は、おいしい事業なのだろう。だが、そのおいしいはずの事業の一つ洋上風力事業が入札制度に変わったら、価格破壊が起きてしまった。落札できず困った事業者は入札の評価基準変更による落札と価格上昇を望んだのだろう。
価格が上がれば事業者はうれしいだろうが、その価格を負担しているのはわれわれ電気の消費者だ。入札の審査条件の変更は、消費者の負担増につながっているのではないか。
おいしい再エネ投資
再エネ設備の導入は温暖化対策としても自給率向上のためにも必要だが、コストが高く市場任せでは導入は進まない。コストが高い再エネ設備導入を促進するため2000年にドイツで本格導入されたのがFITだ。日本が導入した12年の段階では、電気料金高騰に悩んだFIT先進国の欧州諸国は、制度の見直しに躍起になっていた。
そんな中、民主党政権が脱原発の声に押されFITを導入した。当初から発電された電気には高い買取価格が保証され、おいしい事業が約束されていた。
特に事業用太陽光発電からの電気の買取価格は高かったので、土地が安く日照時間が長い九州南部などに事業者が殺到した。おかげで、今九州では太陽光発電からの電気が時として余剰になり、出力制御を行う時間が増えている。