更生保護の中核を担う保護司
保護司は、保護観察対象者である犯罪をした人または非行のある少年が、実社会の中でその健全な一員として更生するよう、保護観察官と協働して指導監督および補導援護をおこなう者である。
保護司法に基づき、法務大臣から委嘱を受けた非常勤の国家公務員であり、活動に応じて実費弁償金が支払われるもの、給与は支払われない。
亡くなった新庄さんは、06年ごろに保護司となり、6年前に滋賀県更生保護事業協会の事務局長に就任したのち、関係機関が連携して地域社会全体で犯罪をした人の立ち直り支援に取り組むネットワークの実現に向けて奔走していた。
医療や就労、教育など各機関をつなぎ、地区ごとに「要」となる人を配置する構想で、「滋賀KANAMEプロジェクト」と名付けた。複雑な相談内容を1人で保護司が抱え込まないようにと発案したものだった(京都新聞、2024年6月4日)。
1人で面接することに対する不安や負担はないのか
保護司は、対象者と2人きりで面接することに不安や負担はないのだろうか。前述の読売新聞では、「26%が1人で対象者の面接に不安や負担を感じていた」と報じている(読売新聞、2024年6月11日)。
事実を確認するために、報道の根拠となった報告書に目を通してみよう。
総務省がとりまとめた『「更生保護ボランティア」に関する実態調査―保護司を中心として<結果に基づく勧告>』では、一般の人にはブラックボックスとなっている保護司の活動実態を明らかにしている。
実際に調査結果をみてみると、たしかに「とても感じている」が6.8%、「ある程度感じている」が19.3%であり、その合計は約26%となる。
しかし、最も割合が高いのは「あまり感じていない」で 43.6%であり、次いで「ほとんど感じていない」が 27.5%、「ある程度感じている」が 19.3%である。「ほとんど」と「あまり」を合計すれば71.1%であり、1人での面接に不安や負担を感じる保護司は全体の割合として多くはないことがわかる。
他の設問をみてみると、より不安や負担の割合が大きいものとして、「同時期に複数の保護観察事件を担当すること」の70.0%(「とても感じている」「ある程度感じている」の合計、以下同じ)や「薬物事犯など対応が難しい保護観察対象者を担当することに対する不安や負担」の78.8%が挙げられる。
保護司からの声をしては、一部の保護司への負担集中や薬物事犯など専門性が求められる対象者への支援の方がより困難を感じていることがわかる。