貨物輸送の傾向から見えるモーダルシフトの方向性
これまでも申し上げてきた通り、「2024年問題」として顕在化した日本の物流・貨物輸送の諸問題を本質的に解決するには、モーダルシフトを推進することが不可欠である。しかしながら筆者は、一部メディアで取り上げられているような短期的加速度的な推進は困難であり、中長期的観点から戦略を考え、着実に実行していかねばならないと考えている。
なぜなら、上述の通り鉄道輸送も内航海運も長い年月をかけてインフラや輸送能力を減らしながら、取扱貨物量やシェアを縮小させてきており、この縮小傾向を拡大傾向に反転させるためには、大きなエネルギーが必要であり、短期的な実現は極めて困難であるからである。
それでは、「2024年問題」を解決するためのトラック輸送から鉄道輸送・内航海運へのモーダルシフトが目指すべき方向性は如何にあるべきなのだろうか。
トラック輸送から鉄道輸送・内航海運へのモーダルシフトというと、現在トラックが担っている輸送の中からトラックドライバーを長時間拘束する中長距離の輸送を鉄道輸送・内航海運を担わせるというイメージをお持ちの方が多いのではなかろうか。
しかしながら、下図が示す通り、日本の貨物流動の中においては、中長距離輸送が多いはずの地域間輸送が占める割合は約15%程度であるのに対して、地域内輸送の割合は85%近いというのが現実なのである。
およそ85%を占める地域内輸送の内訳を見ると、全てと言って良い貨物をトラックが担っている。鉄道輸送の取扱いはほとんどなく、内航海運も極めて限られている。また、約15%という限られた割合の地域間輸送の内訳を見ると、半分以上を内航海運が、残りのほとんどをトラック輸送がそれぞれ占め、鉄道輸送が担う割合は極めて限られていることが分かる。
この実態に目を向けると、「2024年問題」の根幹治療としてのモーダルシフトが向かうべき方向性が分かってくるのではなかろうか。