一つ目は、貨物流動全体の7%弱という限られた割合ではあるが、トラック輸送が担っている地域間輸送を内航海運や鉄道輸送に移していくこと。そして二つ目は、全体の80%以上を占めるトラックによる地域内輸送を鉄道輸送や内航海運に移していくことであろう。
地域間輸送における鉄道輸送や内航海運の分担を増やすことについては多くの方が理解するところであろうが、地域内輸送における両機関の割合を増やすことには疑問を感じる方が多いかも知れない。
しかしながら、1950年代から60年代にかけての鉄道輸送が日本の主たる輸送モードであった時代には、石炭や木材といった品目の地域内輸送が主体であったのだ。また、内航海運については現在でも、中国・四国の瀬戸内海地域、九州地域、北海道地域では、かなりの地域内輸送が行われている。
求められる中長期的な戦略と投資
現在において鉄道による地域内輸送を増やしていくには、50年代や60年代とは異なり、鉄道コンテナやコンテナ列車等の拡充が必要であり、並行して再び貨物取扱駅も現在の漸減傾向から拡充の方向に戻していくことが必要であろう。
内航海運については、内航船の船腹におけるシェアが限られているコンテナ船やRORO船の船腹を拡大していくことが必要であろう。
このように、モーダルシフトにはインフラや輸送能力の拡充が不可欠であり、それには中長期的な戦略とそれを実現する投資が必要なのである。
「2024年問題」の対策として国がまとめた「物流革新緊急パッケージ」におけるモーダルシフトの推進について、「鉄道(コンテナ貨物)、内航(フェリー・RORO船等)の輸送量・輸送分担率を今後10年程度で倍増」をめざすとされているのは、上述のようなポイントを踏まえた方向性ということであると、筆者は理解している。
このような方向性を十分理解した上で、官民が協力して中長期的に本質的な解決を図りつつ推進していくことが、モーダルシフトの要諦であると考える。