11月上旬に開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の期間中、温暖化対策強化案への合意取り付けを狙った英国政府は、参加国、地方自治体、企業に対し自動車からの排出削減を進める宣言への署名を要請した。現在世界の燃料起源二酸化炭素(CO2)排出量の約2割を占める自動車からの排出削減のため、2040年、主要市場では35年までに販売する乗用車全てをCO2排出量ゼロにする車(ZEV)とすることを約束する宣言だ。
欧州連合(EU)諸国を中心に24カ国、インドなどの途上国10カ国が署名したが、四輪車生産世界一の中国(2572万台、2019年)、2位の米国(1088万台)、3位の日本(968万台)、4位のドイツ(468万台)は、署名しなかった。地方政府として米ニューヨーク州、カリフォルニア州、アトランタ市、ロスアンゼルス市などは署名したが、日本、ドイツの地方政府の名前は見当たらない。自動車メーカーとしては、米フォード、GM、中国BYD、英ジャガー・ランドローバーなどが名を連ねているが、メルセデス・ベンツ以外の日独メーカーの名前は見当たらない。
内燃機関自動車の原則販売禁止に踏み切ったドイツ
ドイツでは、つい最近までフォルクスワーゲン以外のメーカーは、電動化には冷淡だった。2年前には、フォルクスワーゲンが「独自動車業界は電動化に取り組むべきだ。例えば低廉な電気自動車(EV)購入者の充電費用を負担する制度などを導入しEVを支援すべきだ」と主張したが、EVにより雇用を失うことを懸念した部品メーカーなどの反発にあった。
結果、フォルクスワーゲンが独自動車工業会を脱退すると騒いだ事件が報道された。ただ、英国の宣言に同意しなかった独政権も、メルケル後を担う新3党連立政権に変わる。連立3党は今までの方針を変更し、35年までに内燃機関(ICE)自動車の原則販売禁止に踏み切り、30年1500万台のEVを目指す方針を発表した。
欧州主要国の中でICE車禁止を宣言していなかったドイツが原則禁止に踏み切ると、35年にハイブリッド車(HEV)を含めた電動化に踏み切るとしている日本は、先進国の中で内燃機関を利用するHEVに固執しているようにみえる。ドイツを見習い、EV化に踏み切るべきだろうか。それともガラパゴス化してもHEVも含めた独自路線を貫くべきだろうか。