欧州全体に広がるかは未知数
ICE車との比較ではEVの部品数、組み立て工数は少なくなる。そのため雇用も約3割減少するとされている。日本で自動車関連産業に従事する人の数は、542万人とされる。そのうちEV化により影響を受ける人は、製造とガソリンスタンドで仕事に携わる人たちだろう。製造のうち3割、ガソリンスタンド従業員全員が影響を受けるとすると、約60万人の雇用が失われることになる。
欧州市場の1月から10月のEV販売シェアでは、フォルクスワーゲングループ25%、ダイムラー(メルセデス・ベンツ)10%、BMWグループ10%とドイツ企業が市場の半分近くを占めている。欧州のEV市場で勝つのはドイツ企業の可能性が高い。
一方、日本企業のEV販売台数は低迷している。20位以内では18位に日産リーフが登場するが、シェアは1.5%しかない。全世界ではどうだろうか。世界のBEV/PHEVの1月から10月までの販売台数は485万台だが、上位20車種にある日本車は、16位トヨタRAV4PHEV 5万755台と18位日産リーフ4万8348台のみだ。あわせてシェアは2%だ。
EC、ドイツのように、HEVを除外しEV主体とする政策を導入し、EVへのシフトを急ぐべきだろうか。欧州自動車工業会によると、今年の第3四半期までに欧州で販売されたEV/PHEV/HEBの台数を見ると、HEVの台数も大きく伸びている。特に、中東欧諸国での伸びの大きさが目立つ(表-2)。主要国でもBEV/PHEVよりも伸び率は低いもののHEVの台数も大きく伸びている。
ECは2035年にICE車、HEVの販売を禁止することを狙っているが、中東欧諸国では十分な数の充電ポイントはなく、相対的に所得が低いにもかかわらず、主要国のような補助制度、優遇措置も少ない。結果、BEV/PHEVの販売台数も少ない。一方、HEVの販売台数はBEV/PHEVを大きく上回っている。この状況が直ぐに改善するとも思えず、EU内の所得格差、充電ポイント整備状況を鑑みると、EC提案の35年ICE車販売禁止案が、すんなり実現するかも不透明だ。
欧州市場全体ではEVが必ずしも売れるかどうかまだ不透明だ。途上国市場ではEV化にはまだ時間が掛かるだろう。ドイツを真似てZEVに踏み切ることにはリスクがあると言える。当面日本は、HEVを含めたICEにも目を向けておく必要があるのだろう。
■修正履歴(2021年12月10日7時50分)
1頁目の「30年に内燃機関(ICE)自動車の原則販売禁止に踏み切り、30年1500万台のEVを目指す方針を発表した。」の「30年に」は「35年までに」でした。訂正して、お詫び申し上げます。