2024年11月22日(金)

World Energy Watch

2021年12月10日

EV化を急ぐ英国が前のめりなのはなぜ?

 英国は自動車大国だ。トヨタ、日産、ホンダも工場を保有している。英自動車工業会によると、出荷額789億㍀(11兆8000億円)、付加価値額153億㍀(2兆3000億円)、製造での雇用者数18万人、間接雇用を含めると86万人以上だ。130万台の乗用車、8万台の商用車が19年に生産され、約8割が輸出されている。英国を支える輸出産業ではあるが、実は輸出以上に輸入が行われている。EV化で自動車産業をリードすることができれば、純輸出産業に変わることができる。

 英国の完成車輸出額(20年)は、272億㍀(4兆800億円)あり、英国の財の輸出額3112億㍀(46兆7000億円)の8.7%を占める最大の輸出品目だ。部品を含めると300億ポンド(4兆5000億円)に達する。最大の輸出相手はEU53.5%、次いで米国17.7%、中国7.6%、日本は4位3.5%。一方、完成車および部品輸入額は438億ポンド(6兆5700億円)あり、輸出額を46%も上回っている。輸入相手はEU78.1%、次いで7.3%の日本だ。英国の自動車貿易は過去10年間輸入超過が続いており、18年から3年連続で額は拡大している。

 20年11月ボリス・ジョンソン英首相は、気候変動対策の一環としてICE車を30年、移行期の技術とされるプラグインハイブリッド車(PHEV)も35年に販売中止にすると発表した。電動化に備え、充電ポイント整備に13.6億㍀(2040億円)、購入補助金に5億8200万㍀(870億円)、蓄電池製造に5億㍀弱(750億円)支出することも同時に発表された。

 電動化で主導権を取れれば、英国の自動車産業を純輸出に変えることが可能になる。英国が前のめりと呼べるほどEV推進に邁進するのは、欧米中市場でEV販売数量が大きく伸びているからだ。

欧州、中国で販売が急増するEV

 20年前半の世界の自動車販売台数は、コロナ禍により前年比28%減と大きく落ち込んだ。EV販売台数も落ち込んだが、前年同期比14%減と相対的には健闘した。その後、欧州主要国がコロナ禍からの経済回復支援策としてEV購入に関する補助金の増額を行ったことからEV販売は持ち直し、年間では19年の226万台から43%増の324万台となった。その結果、20年末の世界のEVの累積台数は、バッテリー稼働のBEVが685万台、PHEV335万台、燃料電池車(FCEV)3万台となった(図-1)。

 EU主要国の補助制度が継続したこともあり、21年前半もEV(BEV/PHEV)の販売台数は欧州、中国で大きく伸びた(図-2)。その勢いは、さらに加速し10月の中国の販売台数は32万5000台、対前年同月比113%増。販売台数に占めるシェアは16%(うち13%がBEV)に達した。1月から10月までの累計では230万台、販売台数のシェア13.7%(うち11.1%がBEV)。


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