World Energy Watch

2021年11月22日

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 英国グラスゴーで開催されていた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の最終日、アロック・シャルマ議長は悔し涙を流した。英国が目論んでいた「石炭火力と化石燃料への補助金の段階的廃止(Phase-out)」が、インド、中国、他の化石燃料への波及を恐れた産油国の反対に遭い、197カ国による最終合意文書、グラスゴー気候合意では「対策が取られていない石炭火力の段階的縮小(Phasedown)と非効率な化石燃料補助金の段階的廃止」となったからだった。

悔し涙を流したアロック・シャルマ議長(左)、英国のボリス・ジョンソン首相にとっては〝してやったり〟だったのか(代表撮影/ロイター/アフロ)

グラスゴー気候合意とは

 石炭火力については思い通りにはならなかったものの、パリ協定で合意された「気温上昇を2度、可能であれば1・5度に抑制する目標」は、英国の狙い通り実質的に1・5度目標に置き換えられた。グラスゴー合意では、2030年までに10年比二酸化炭素(CO2)を全世界で45%削減、今世紀半ばに脱炭素達成の必要があるとされた。そのため、今後の10年間が決定的な10年になるとし、各国は目標の強化に努めるとされた。

 グラスゴー合意では、先進国が途上国の温暖化対策に拠出するとしていた20年1000億㌦(11兆円)が達成されなかったことが遺憾とされ、できるだけ早く年間1000億㌦を達成し、25年まで継続することが要求されている。先進国は今後さらに資金を拠出することになりそうだ。

 環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんは、COPでは無駄話ばかりとして、グラスゴー合意を酷評した。だが、開催国英国の声明文で、ボリス・ジョンソン首相は、やるべきことは多くあるとしながらも、「石炭の段階的縮小をCOP史上初めて合意文章に記載したことと1・5度への道筋をつけたことは大きな前進であり、気候変動問題の終わりの始まり」と成果を誇っている。温暖化対策に熱心な英国にすれば、実際には〝してやったり〟ではないのだろうか。

 石炭、天然ガス生産量が急減している英国は、原子力発電所の新設を進める一方、再生可能エネルギー(再エネ)に舵を切り、温暖化対策を進めながら経済成長を狙うことが可能な国だ。温暖化対策の負担は他国ほどではない。

 しかし、英国に代表される欧州の主要国と日本の事情は大きく異なる。英国が簡単にできた、あるいは、できることも、日本には困難な取り組みになる。日本はこれから気候変動問題に取り組む「決定的な10年」ではなく、「苦難の10年」を歩むことになる。

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