「日本のクリーンエネルギー戦略、LNG市場に衝撃──輸入急減の見込み」
米ブルームバーグ社が7月27日、この見出しで日本のエネルギー戦略を報じた。世界最大規模の液化天然ガス(以下、LNG)輸入国の日本が、電源構成におけるLNG火力の割合を下げることを公にしたためだ。報道によれば、米国やカタール、豪州などのLNG供給国で動揺が広がったという。
発端は7月21日。経済産業省資源エネルギー庁(以下、エネ庁)が国の中長期的なエネルギー政策方針である「第6次エネルギー基本計画(以下、エネ基)」の素案概要を初めて示した日にさかのぼる。
素案では、2030年の電源構成を「野心的」な見通しとして、発電時に二酸化炭素(以下、CO2)を発生させない再生可能エネルギー(以下、再エネ)の割合を36~38%と19年実績(18%)から約2倍に、原子力の20~22%は同6%から3倍以上に設定した。一方で、LNG火力の20%は同37%から17%減、石炭火力の19%は同32%から13%の減と大幅な縮小を見込んだ。
エネ基の策定に向けた検討を行う総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(以下、分科会)で委員を務める国際大学の橘川武郎副学長は「エネ基は海外からの注目度も高い。素案の電源構成が確定されれば、日本は供給国に対する長期的な供給相手としての存在感が薄れ、日系企業がLNGで買い負ける可能性が高まる。これが現実になれば、電気料金の高騰やエネルギーの安定供給にも影響を及ぼすかもしれない」と警鐘を鳴らす。
素案の数字の背景にあるのは昨年10月、菅義偉前首相が掲げた「2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする)の実現を目指す」との目標(以下、50年目標)だ。さらに今年4月には、「30年度までに温室効果ガスを13年度比で46%削減することを目指し、さらに、50%の高みに向けて挑戦する」と表明した(以下、30年目標)。こうした表明は日本だけでなく先進国を中心に世界に広がっている(下図)。
経産省によれば、今年4月時点で125カ国・1地域が日本と同様に50年までのカーボンニュートラルを目指すことを表明しているという。