活発な政策論争は大歓迎
でも、その議論は誰のため?
菅前首相による50年目標の表明を受けた昨年11月、内閣府に河野太郎前内閣府特命担当大臣(規制改革)直轄の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(以下、TF)」が設置された。TFの役割は、再エネの主力電源化を含む最大限の導入に向け、府省庁間にまたがる規制の点検や見直し、およびその迅速化だ。
7月30日に開かれた第47回の分科会では、このTFの委員と複数の分科会委員の主張が対立し、30年の電源構成や素案の内容について激しい舌戦を繰り広げた(下図)。
TFの委員を務める自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長は「再エネの割合はまだ少ない。適切な政策によって30年に45%以上とすることも可能だ」と話す。
一方、今回取材したエネルギー業界関係者の多くは異口同音に「〝帳尻合わせ〟にすぎない」と評価する。分科会委員も務める地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾主席研究員は「事実上8年しかない中でイノベーションにはほとんど期待できない。必達の数字ではなく願望的な数字だ」と語った。
電源構成の数値に関してエネ庁は「需給両面におけるさまざまな課題の克服を『野心的』に想定した場合の見通しだ」とする。素案の数値や30年目標の変更についても「現時点では想定していない」と否定的だ。
かつて経産官僚の立場でエネ基の策定に携わったという社会保障経済研究所の石川和男代表も「これまでの電源構成における数値目標も褒められたものではないが、今回の素案の数値は特に現実味がない」と断じる。
また、複数の関係者からも「TFはとにかく再エネを増やすことだけが目的で、それによって持続可能な発展が可能か、という視点が欠けている」「『再エネ』というワン・イシューで国の根幹であるエネルギー政策を語るのは無理がある」など、TFの存在や主張を訝る声が多く上がった。
一方、TFの委員も務める都留文科大学地域社会学科の高橋洋教授は「お互いの立場や拠って立つところが異なるため、意見が対立するのは当然。対立を恐れずに議論を戦わせた上で、最後は政治が判断することだ」とTFの意義を強調する。
TFの事務局を務める内閣府規制改革推進室の山田正人参事官は、委員構成とその狙いを「内閣府内で議論し、問題提起をする側の立場、規制改革の〝切り込み隊長〟として相応しい委員を選んだ。相反する意見だとしても双方の主張がないと最適解は出ない」と明かす。さらに、自民党役員人事の変更に伴うTFへの影響については「再エネ規制の改革をやらないことはないと思うが、それも含めて新しい大臣が決めること」と述べるにとどめた。