Wedge REPORT

2021年1月27日

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石炭火力発電は、優れた安定供給性と経済性を有するが、温室効果ガスの排出量が多い(MasaoTaira / iStock / Getty Images Plus)

 「非効率という線引きで特定の石炭火力発電所を狙い撃ちしている。まるで『魔女狩り』のようだ」。ある電力業界関係者は小誌の取材に対し、こう語気を強めた。

 怒りの発端となったのは2020年7月3日、梶山弘志経済産業大臣が、非効率な石炭火力を30年度までに確実にフェードアウトさせるべく、「新たな(・・・)規制的措置の導入や、早期退出を誘導する仕組みの創設などの検討を開始する旨を表明したことにある。

 これには伏線があった。18年に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」における30年度エネルギー需給構造のあるべき電源構成(エネルギーミックス)では、石炭火力の割合を26%程度と定めている。そのため同計画では、石炭火力の発電方式のうち、超臨界圧(SC:下表)以下の発電所については、退出に向けて取り組むと明記されていたからだ。

(出所)経済産業省第1回石炭火力検討WG資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 梶山大臣の発言後、20年8月からは「非効率」の基準などについて、経済産業省の「石炭火力検討ワーキンググループ(WG)」で議論が開始された。そこでは非効率石炭火力の〝包囲網〟が着々と形成されつつあり、関係者からは冒頭のような戸惑いの声が上がっている。

 梶山大臣の表明について、経産省資源エネルギー庁電力基盤整備課の上田大晃係長は「既に示していた方針の延長線で、非効率石炭火力のフェードアウトの実効性を担保するための表明だ。ただ、規模が定量的に可視化できるレベルで事業者に伝わったのが、今回の石炭火力検討WGの議論だったため、想定より踏み込んできたという感覚を持たれたのではないか」と話す。

フェードアウトの裏で進む新設
脱炭素にはどれほど寄与する?

 この「急な」経産省の動きの背景には何があるのか。エネルギー政策に詳しい国際大学大学院国際経営学研究科の橘川武郎教授は政府の方針について、「本質は『高効率の石炭火力は使い続けたい』との意思表示にある」と指摘する。

 事実、梶山大臣の表明に先立つ6月30日にはJパワー(電源開発)の竹原火力発電所新1号機(広島県)が、翌7月1日には電源開発と日本製鉄が共同出資により設立した鹿島パワーの鹿島火力発電所2号機(茨城県)が相次いで営業運転を開始している。これらはいずれも超々臨界圧(USC:上表)と呼ばれる方式で「非効率」な石炭火力には該当しない可能性が高い発電所だ。経産省の公表資料によると、24年までに10基以上の石炭火力が運転を開始する予定だとされている。

 問題となるのが、「高効率の石炭火力は使い続ける」ことによる二酸化炭素(CO2)削減への影響だ。電力中央研究所社会経済研究所の永井雄宇主任研究員は「SC以下の石炭火力発電の年間発電量は約1000億㌔ワット時である。その全てをUSCで代替し、SC以下の石炭火力を早期退出させたとすれば、年間500万㌧程度のCO2が削減されることとなる。ただし、新設されるUSCが営業運転を開始すれば、年間250万㌧のCO2排出(※設備容量50万㌔ワット、設備利用率80%で計算)が想定される。SC以下の発電所が退出するまでに排出するCO2と新設されるUSCが寿命を迎えるまでに排出するCO2とを比較すると、火力の早期退出を誘導して新陳代謝を進める政策は、将来的には削減効果以上の排出量につながる可能性が高い」と語る。

 国立環境研究所によれば、日本で排出されるエネルギー分野のCO2発生量は18年度の実績で年間約11億㌧で、500万㌧というレベルではその効果は微々たるものと言える。

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