World Energy Watch

2021年11月22日

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 14億人近い人が暮らし、「世界飢餓レポート2021」によると、人口の15.3%、2億人以上が栄養失調状態にあり、5歳以下の発達阻害率が34.7%とされる国の温暖化対策への取り組みの遅れを、先進国は責めることができるのだろうか。世界の課題は温暖化だけではない。COP会場で、「気候正義」「脱石炭」を掲げた日本の高校生はインドの主張を理解できないのだろうか。脱石炭を求めCOP会場に集まった数万人の環境団体の人たちは、自分たちが利用する航空機のCO2排出量を考えたことがあるのだろうか。

脱炭素の切り札を持つ英国

 英国の天然ガス生産量も石炭ほどのスピードではないが、減少している(図-3)。英国の北海からの天然ガス生産は、20年前のピーク時には輸出を行うほどだったが、埋蔵量が枯渇してきている。最近ではピーク時の3分の1程度まで生産量が落ち、国内需要量の半分程度を供給する程度だ。化石燃料の生産の落ち込みによる自給率低下の中で、英国が再エネと原子力により安定供給維持と温暖化対策を進めるのは当然とも見える。

 英国はCOP26開催直前10月17日に、2035年までに電源の脱炭素化を行うと発表した。その狙いは、先進7カ国(G7)の中で最も早く電源の脱炭素化を行い、電気自動車(EV)、原子力発電設備、蓄電装置などで競争優位な地位を作り出し、海外から民間資金を呼び集めることと新規雇用を創出することにある。そのため、EV関連から新型原子炉まで多くの分野に政府資金の投入が行われることも発表された。

 その英国の脱炭素の大きな切り札が洋上風力発電だ。いま、英国の洋上風力設備は世界一の1038万㌔ワットあり(図-4)、20年の電力供給量のシェアは13%だった(図-5)。これを30年に4000万㌔ワットにするとジョンソン首相が1年前に発表していたが、35年脱炭素目標に沿い、6000万㌔ワット、あるいは7500万㌔ワットに、一段と引き上げられることになると報道されている。35年には電化の進展と電力利用の水素製造もあり、電力需要は今から40%程度伸びるとされているが、洋上風力が半分程度の供給を行う目論見になる。

原発も大いに活用

 洋上風力に加え、太陽光、陸上風力、さらに蓄電池の導入も想定されているが、安定的な脱炭素電源として原子力も活用される。英国で仏電力公社(EDF)が現在建設中のヒンクリーポイントC原発に、中国資本が参加している。その後の新設計画にも中国資本の参加が予定されているが、英国では人権問題などから中国資本排除の意見が出ており、大型原発の建設には不透明感が出ている。

 一方、ロールス・ロイスが中心になり開発している47万㌔ワットの小型モジュール炉(SMR)には政府補助金2億1000万㍀(320億円)の投入が発表された。ロールス・ロイスは、設計認証審査を申請するための手続きに入ると発表した。30年までに1号機の運転を開始し、35年までに10基の操業を目指すとしている。英国は洋上風力とSMR主体に35年電源の脱炭素を図ることになる。そのコストはまだ見通せないが、英国政府は安定的で競争力のある価格を提供可能と述べている。

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