12月15日東京都議会で、新築住宅に太陽光パネル設置を義務化する法案が成立した。住宅メーカーなどが2025年から設置の義務を負うことになる。
反対したのは、自民党、東京維新の会、地域政党自由を守る会。賛成したのは都民ファーストの会、公明党、共産党、立憲民主党、ミライ会議、グリーンな東京、生活者ネットワークだ。
以前も指摘したが(「小池知事の太陽光パネル義務化が招く停電危機と負担増」)、この政策は温暖化対策としては費用対効果が悪い上に、貧富の差を拡大する。格差問題に敏感なはずの共産党、立憲民主党が賛成したのは、実は格差問題を考えていないか、あるいは政策の分析がきちんとできていないか、どちらかだろう。
都議会では採決前に、地域政党自由を守る会の上田令子議員が、小池百合子都知事にパネルの部品が中国新疆ウイグル地区で製造されている人権問題、経済問題、防災上の問題などを質問した。都知事は答えず、代わりに環境局長が答えにならないすれ違いの答弁をする有様だった。
太陽光パネル義務化は問題だらけ
東京都の政策が、全国の家庭、産業に影響を与え、とりわけ関東、正確には東京電力管内の静岡県の一部も含む地域の全世帯、全企業の電気料金を引き上げることになるのだが、小池都知事は知らん振りを決め込んでいる。
温暖化対策のためとしているが、2012年に導入された固定価格買取制度(FIT)を通し再生可能エネルギー(再エネ)からの電気の買取に費やされた金額は、今年6月までの10年間で約22兆円だ。国民一人当たり10万円を超える資金を投入し、二酸化炭素(CO2)はどれほど減ったのだろうか。家庭用太陽光発電設備の温暖化対策としての費用対効果は、再エネ設備の中でも規模の問題から相対的に悪くなる。
パネルの約9割は輸入され、その大半は中国製だ。エネルギーと原材料を強権国家に依存する怖さをロシアのウクライナ侵略で思い知った欧米諸国は、脱中国も進めている。そんな中で人権問題も指摘される中国製設備の輸入増を図ることになる。
災害時の問題も指摘され、さらに使用後の廃棄物処理の問題も指摘されている。どこから見ても、導入する必要性を見つけられない不思議な政策だ。
京都府、京都市も300平方メートル以上の建物に義務付けを行っている。京都府、京都市をはじめとするいくつかの自治体は、東京都と同様にパネルと蓄電池に補助金を用意している。住宅よりは規模が大きいので、費用対効果はましだが、税金が使用されることに変わりはない。
川崎市なども東京都に倣った制度導入を検討している。自治体関係者は、政策の費用と便益を真剣に検討したのだろうか。国の政策との整合性を考えたのだろうか。