格差は都内だけでなく関東に拡大する
太陽光パネルを住宅に付けられる世帯は、相対的に高所得だ。米国エネルギー省の統計では太陽光パネル導入世帯の所得は、図-1の通り世帯所得中央値の約1.8倍ある。
日本では太陽光パネル導入世帯の所得に関する統計は見当たらないが、一戸建て住宅保有世帯と所得に関する統計はある(図-2)。
当然だが、世帯所得と持ち家比率は比例している。太陽光パネルを付けられる、あるいは住宅を新築できる世帯の所得は相対的に高い。
賃貸住宅に住んでいる世帯などはパネルを導入したくてもできないが、導入世帯に対する補助金の負担を強いられる。東京都の今の補助金額は、パネル1キロワット(kW)当たり10万円から15万円。平均的な設備で1世帯40万円程度だ。加えて蓄電池への補助金もある。
それにしても、日米の階層別世帯所得の形状は大きく異なっている。日本は、低所得層の比率が高い。
世帯所得中央値も日本440万円(2021年調査)に対し、米国は6万4000ドル(約870万円)。日本のほぼ2倍ある。この所得分布状況で相対的に所得が低い層が負担だけを強いられる。
補助金の負担は都内だけの問題だが、導入世帯の電気料金の支払いが減ることにより負担増は東京電力管内の全消費者に及ぶことになる。
太陽光パネルを導入した世帯は、太陽光が発電する時間帯は自家消費を行い、夜間など発電しない時間帯に限り電力会社から電気を購入する。
例えば、年間3500キロワット時(kWh)の消費がある世帯では、2000kWh分は自家消費になり、1500kWhのみ購入のように変わる。電気料金には送配電線の利用料が含まれているが、太陽光パネルを付けた世帯では、この負担額も減少する。
送配電線は電気の全消費者が利用しているので、太陽光パネル導入世帯の負担減少分を東京電力管内の他の消費者が負担する必要がある。パネル導入世帯は余剰電力を売るため送配電線の利用を行うが、その費用負担を行うことはない。パネルを導入しない世帯の負担が増加するのは東電管内だけではない。全国の消費者の負担も増える。