全国の消費者が負担増に
一地方自治体が導入する政策が、全国の消費者の負担を増やすことにもなる。太陽光パネルなど再エネ設備が発電する電気は、FITに基づき購入され、その購入代金は電気料金に含まれる再生可能エネルギー賦課金により負担される。今年度の負担額は1kWh当たり3.45円なので、標準的な電力使用量の世帯であれば年間1万円を少し超える。
パネルを導入した家庭は電気の購入量が減ることから、この賦課金額の負担も減る。他の消費者がその減少分を負担することになり、東京都での義務化により住宅用太陽光パネル導入量が増えると東京都の消費者の負担額が減少し、全国の消費者の負担額が増えていく。
再エネ電源からの買取に要した額は、制度開始以来22年6月までに累積21兆9000億円だ。再エネからの発電により火力発電の燃料費などが節約された効果(回避可能費用)を見込むと、消費者が負担した額は累積約15兆円を超えていると推定される。
FIT導入後の、1kWh当たりの賦課金額単価と買取金額、回避可能費用総額の推移は図-3の通りだ。22年6月末時点では累積買取額21兆9000億円の内、家庭用太陽光(10kW未満)に2兆7340億円、事業用(10kW以上)に14兆3420億円使われている(表)。
合わせると買取額の8割近くは太陽光設備から発電された電気の買取に費やされている。買取量に占める太陽光発電の比率は約7割なので、太陽光、中でも家庭用設備の発電量当たりの買取額が相対的に高いことが分かる。
太陽光発電からの電気の17兆円を超える買取総額の内、消費者は約12兆円を負担した計算になる。国民1人当たり太陽光設備だけで約10万円を負担した効果は、いかほどだったのだろうか。
二酸化炭素削減効果はあったのか
FITに基づき22年6月までに買い取られた累積の発電量は、10kW未満の設備から700億kWh、10kWh以上の設備から3795億kWhある。太陽光発電が増えた分、化石燃料の消費が減り、CO2の排出量も減少している。
21年度の発電量比では、石炭火力が31%、天然ガス火力が34%、石油火力が7%だった。この構成比の燃料を太陽光発電が置き換えたとすると、削減可能なCO2の量は1kWh当たり約750グラムになる。太陽光発電により減少したCO2は、累積では3億3700万トンになる。消費者負担額12兆円の前提で、CO2削減コストは1トン当たり約3万6000円になる。
この費用は高いのだろうか、安いのだろうか。原子力発電の小型モジュール炉(SMR)の投資額は、米国で最も開発が進んでいるニュースケールのSMRを100万kWまで組み合わせると、日本円で約4000億円だ。