進むEUの脱ロシア産化石燃料
EUは脱ロシア産化石燃料を進めている。昨年8月10日にロシア産石炭輸入禁止、12月5日に船舶によるロシア産石油輸入禁止を実行した。
東欧諸国がパイプライン原油に依存しているので、パイプライン原油を禁輸対象外とせざるを得ない。天然ガスについては、EUが削減に乗り出す一方、ロシアも昨年夏ごろからEUを脅かすため供給数量を大きく削減した(図-1)。
そのため今年から来年にかけての需要期となる冬季を乗り切れないとの見方も出ていたが、昨年末からの暖冬とEU諸国のガス節約努力が幸いし、EUの天然ガス在庫量は、今年3月時点でも昨年同時期のほぼ2倍、フル貯蔵能力の55%、600億立方メートル(60BCM-Billion Cubic Meter)ある。
EUは夏の天然ガス不需要期に在庫を積み増し、冬季に消費する。通常積み増し量と冬季の在庫取り崩し量は50BCMだが、昨年春から夏にかけてはロシアからの供給量が減少する中で70BCMの積み増しが行われた。石炭火力の利用増などにより天然ガス消費量を削減した効果が大きかった(図-2)。
昨年積み増しが行われた期間にロシアから供給された量はロシア産LNGを含めると44BCM前後と推測される。仮に今後ロシアからの天然ガス供給量がゼロになっても、米国産液化天然ガス(LNG)などが昨年と同じレベルで供給されれば、この冬直前の在庫は平年レベルの消費を前提にすると約70BCMまで積みあがるので、ロシアからの供給ゼロが続いても、冬季の在庫取り崩しにギリギリ耐えられる計算になる。
欧州の天然ガス需給環境が改善したことから、天然ガス価格に加え発電用代替燃料として利用されている石炭の価格も下がり、火力発電比率が高い日本の電気料金も僅かながらだが下落傾向になった。
価格高騰という大きな副作用に晒されながらだったが、EUの脱ロシア産化石燃料は石炭、石油に続き天然ガスでも着々と進んでいる。EUが脱ロシアに次いで取り組むのは脱中国だ。
EUが進める脱中国産原材料
ECは脱ロシア産化石燃料のため再エネ利用増の方針を打ち出している。原子力発電についてもフランスを中心とするEUの11カ国が、2月末に原子力同盟を結成し小型モジュール炉などについて密接に連携し推進する立場を明らかにしている。
ドイツは、脱ロシアと脱炭素を実現するため再エネ法(EEG)を昨年改正し、30年までに電源の80%を再エネにする目標を立てた。太陽光発電設備を30年までに現在の3倍以上の2億1500万キロワット(kW)に。陸上と洋上風力をそれぞれ5700kWと2200万kW増設し1億1500万kWと3000万kWに拡大する計画だ。