中国が席巻する世界の風力発電設備
世界の洋上風力発電設備設置容量を見ると、中国が世界のほぼ半分のシェアを持っている(図-5)。今、洋上風力設備は全風力設備容量の7%程度しかなく、依然として陸上風力設備が世界の主流だ。22年末で世界の導入設備容量は8億4000万kW。その内約4割は中国に設置されている(図-6)。
世界一の風力発電設備容量を背景に、中国企業は設備製造においても世界を席巻している。風力発電機、増速機を収める洋上のナセル設備では、中国メーカーが欧州メーカーへの納入品を含め、世界の約6割のシェアを押さえている。
風力発電設備の製造から撤退している日本メーカーが、これから市場に参入するのは困難と言わざるを得ない。さらに、問題がある。レアアースなど主要原材料供給における中国の存在だ。現状では中国に原材料を頼らざるを得ない。
洋上風力発電設備の導入は電気料金を上昇させるが、日本企業の支援につながる可能性はなさそうだ。米国は昨年8月に成立したインフレ抑制法の中で脱炭素に関し様々な支援策を導入している。欧州委員会も米国に対抗する産業政策を発表している。日本の支援策は欧米と異なり、民間企業頼みだ。
欧米と異なる日本の脱炭素支援策
米国のインフレ抑制法では、再エネ、原子力による発電から水素製造、電気自動車まで脱炭素に係る様々な助成制度が用意されている。助成の形は、投資額に対し税を還付する投資税額控除から補助金の投入まで多様だ。
例えば、風力発電であれば、投資額の30%の税の還付を受けるか、あるいは1キロワット時(kWh)当たり2.75米セントの生産税額控除(発電量に2.75セントを掛けた金額分が税金から控除される)が適用されるので、投資に対する収益率が向上し投資の決断が容易になる。
脱炭素電源を利用し水の電気分解により水素を製造すれば、1キログラム当たり3ドルの生産税額控除を受けることが可能だ。助成策により競争力のある米国のエネルギー価格はさらに競争力を持つ。
自動車については米国製部品などを条件に電気自動車に最大7500ドル、燃料電池トラックに最大4万ドルの補助金が支出される。今年4月に発表された補助金対象車種は全て米国メーカー製だった。
「バイアメリカン政策」を進めるエネルギー大国米国への産業の流出を懸念する欧州委員会は、米国に対抗する「ネットゼロ産業法案」と原材料の脱中国を図る「重要原材料法案」を今年3月に発表した。
さて、日本では10年間に150兆円超の投資を想定する「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX 推進法)が5月12日に成立した。
20兆円の新たな国債「GX経済移行債」が発行されるが、償還は将来導入される炭素価格(二酸化炭素の排出量に基づく税など)により行われる。20兆円が投入される産業と負担する産業は異なるが、要は民間の資金だ。
企業が150兆円を投資する想定だが、投資の主体である製造業とエネルギー関連産業が負担する減価償却費は年間14、15兆円しかない。脱炭素のために150兆円を負担することは無理だ(「経済成長、給与増に寄与しない日本のGX投資」)。