2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2023年5月22日

エネルギー自給率向上策を支える洋上風力

 2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、主要国のエネルギー安全保障政策を大きく転換させた。

 主要国は、1973年の第一次オイルショックを契機としてエネルギー供給の分散を安全保障政策の中心にした。その結果、天然ガス、石炭、石油全てについて大きな輸出量を持つロシアが、世界一のエネルギー輸出国に踊り出た。

 ウクライナ侵攻を見た主要国は、ロシア産エネルギーへの依存度を下げるため、新しい安全保障政策として自給率向上を打ち出した。原子力と再生可能エネルギーの強化だ。

 その柱の一つは洋上風力だ。陸上との比較では、設置場所の制約が少なく、周辺への影響、景観などの問題も少ない。何と言っても風況が陸上より良い。

 欧州では、ドイツ、フランス、英国、オランダなど9か国が、共同で北海での洋上風力開発を目指している。30年までに1億2000万kW、50年までに3億kWの設置が目標だ。22年末現在の欧州の洋上風力の設備容量約3000万kWを8年間で4倍にする計画になる。

 日本政府も第6次エネルギー基本計画において洋上風力発電を柱の一つとしている。30年度の洋上風力発電設備容量の目標を570万kWとし、案件組成を30年度までに1000万kW、40年度までに3000万から4000万kWと見込んでいる。

 千葉県銚子沖、秋田県沖などに促進地域が設けられ、設備の低コスト化を目指すための支援策も導入されているが、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、日本の洋上風力の発電コストは欧州との比較では相対的に高い。

設備費がかかる日本の洋上風力

 図-3は、2021年に操業を開始した洋上風力設備の運転期間を通した発電コスト(設備の加重平均値)を示している。日本のコストは北海を利用する欧州諸国との比較では2倍から4倍。中国との比較でも2倍以上と想定されている。

 G7の会合前に、日本企業が英国の洋上風力事業に投資すると発表されたが、このコストの数字を見れば競争力のある英国の事業に投資するのは理解できる。

 コストに差がある理由の一つは設備費の違いだが、最大の理由は風況、つまり設備利用率に大きな差があるためだ。図-4が加重平均の設備利用率を示している。仮に設備費が同じとしても日本の利用率が欧州諸国の6割から7割であれば、発電コストは50%ほど高くなる。

 日本では洋上風力設備の導入が進めば、水深が深くなりやがて着床式から浮体式にならざるを得ない。欧州北海のように広範囲の浅瀬の海域に恵まれない日本では仕方がないことだが、設備費と工事費の増大を招くことになり、競争力に影響する。

 その一方、日本企業が競争力のある洋上風力設備を開発するとの期待もある。可能だろうか。


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