2024年3月2日(土)

Wedge SPECIAL REPORT

2023年6月20日

原油輸入の脱ロシア化で
日本の中東依存度は95%に

 2021年、ロシアは石油およびガス輸出で世界1位の地位を占めていたが、軍事侵攻発生後、ロシアの石油(と石炭)は西側の禁輸対象となり、ガスは、欧州向けパイプラインガス輸出が激減、国際エネルギー市場は一気に不安定化した。ロシア依存度の高い欧州は、価格暴騰に加え、エネルギー不足発生も懸念され「エネルギー危機」的な状況に直面した。

 その結果、エネルギー安全保障確保が喫緊の最重要課題となった。欧州連合(EU)は脱ロシアを目指す「REPowerEU計画」を発表、30年までに(前倒しを図りつつ)ロシア産ガスからの脱却を目指し、再生可能エネルギー推進、徹底的な省エネなどを実施しつつ、米国産の液化天然ガス(LNG)など非ロシアの化石燃料確保に邁進した。欧州や日本にとって、当面は非ロシアの化石燃料の安定供給確保は急務であり、米国やカタールのLNGの確保は極めて重要になった。日本は脱ロシアで原油輸入に占める中東依存度が95%まで上昇した。中東情勢の安定と中東からの石油安定供給確保は、日本および世界にとって極めて重要な課題となった。

G7の中で、対露依存度が高い欧州(出所)各種統計より筆者作成 写真を拡大
エネルギー自給率が極めて低い日本 (出所)各種統計より筆者作成 写真を拡大

 ロシアのエネルギー輸出の先行きも重要だ。ロシアのエネルギー収入の中心である石油輸出について西側は禁輸を科しているが、西側が引き取りを減らした分、中国やインドが割引で調達を増やし、現時点まではロシアの輸出量全体に大きな影響はない。むしろ、価格高騰でロシアの石油収入は危機前より増加している。天然ガスについては、パイプラインで直結する欧州向け輸出が低下した分を中国などに振り向けることはインフラ建設なくしては不可能なためロシアの輸出量は低下した。しかしいまだウクライナ経由などでロシアから欧州向けにパイプラインガス輸出が続き、ロシアのLNGも欧州向け(およびアジア向け)に供給されている。

 今後の制裁強化、ロシアの対抗戦略、戦争の帰趨などによっては、ロシアのエネルギー輸出が再び大きな不安定要因となる可能性もある。制裁によるロシアのエネルギー開発鈍化と中長期的な供給低下の影響も含め、今後のロシアのエネルギー情勢が注目される。

 ウクライナ危機前は脱炭素化に世界の関心が集中していた。しかし危機発生で戦略物資であるエネルギーの安定供給が最重要課題となった。ドイツのような環境問題に熱心な国でさえ、石炭利用で電力安定供給を図っている。途上国・新興国でも安価なエネルギー確保が重視され石炭利用が拡大、短期的には脱炭素化に逆行する動きも現れている。しかし中長期的には「REPowerEU計画」にみられる通り、西側では脱ロシア(エネルギー安全保障強化)と脱炭素化の両立を目指す取り組みが強化されている。30年の温室効果ガス(GHG)削減目標(日本:46%減、EU:55%減、米国:50~52%減)達成のため、省エネ・再エネの促進、原子力利活用、水素導入拡大などへの取り組みでエネルギー安全保障強化との両立が図られている。また、脱炭素化に至る道筋で引き続き重要な役割を果たす化石燃料の安定供給確保およびGHG削減と両立させるための「化石燃料の脱炭素化」が重要課題となる。


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