2024年5月19日(日)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2023年10月5日

 前回「世界と比べると日本の『物流2024年問題』の核心が見える」では、米国のトラック運送がトレーラーという「箱」を台切りすることにより、ドライバーが手待ちからも荷役からも解放されているのに対し、日本は単車と呼ばれる荷台と運転台が分割されないトラックが使用されているが故に、ドライバーが手待ちと荷役作業に縛り付けられていることが、日本と米国の運送業における労働生産性の較差の核心だと指摘した。

 これに対し、多くの人がトレーラー輸送は日本の25倍もの国土を有する米国だから可能であり、国土の狭い日本では不可能だと考えるだろうし、「物流2024年問題」まで半年を切った現段階で、単車を捨ててトレーラー化を図ることは実行できないと疑問を抱く人も多いだろう。今回は、そのような疑問にお答えしたい。

日本より国土が狭い英国やスイスでもトレーラー普及

 読者の中には、21年1月1日午前0時に英国が欧州連合(EU)を離脱したいわゆるBREXIT後や、新型コロナウィルスの感染拡大の際中にEUトンネルの英国側でのトラック渋滞の映像をニュース番組等でご覧になった方も多いだろう。あの時に英国で渋滞していたトラックのほとんどが、日本の単車のようなSingle Unit Vehicleではなく、下の写真のようなCombination Vehicle、すなわちトレーラーであったことを思い出して頂きたい。

 これらの写真は、15年11月に筆者が撮影したものであるが、その際にも高速道路のサービスエリアに停まっていた営業用車両のほぼ全てがトレーラーであった。

 日本の25倍もの国土を有する米国とは異なり、英国の国土は24万3610平方キロメートルと、日本の約3分の2、本州と四国を合わせたほどの面積しかない。ただし、可住地は約90%ということで、日本の二倍前後の可住地面積を有すると言われている。筆者は、日本の可住地と欧州のHabitable Landは定義が異なっていると考えているので、この英国が日本の2倍前後の可住地を持っているという認識には疑問を持っているが、その議論は別の機会に取って置くことにしたい。

 次に、下の写真をご覧頂きたい。これは4年半ほど前にスイスのジュネーブ市内のスーパーマーケット背後の荷受用ドック前で撮影した写真であるが、米国と同じようにトレーラーが高床式ドックに台切りされていることが確認される。

 スイスの国土面積は3万9516平方キロメートルと日本の10%強しかなく、しかもアルプス山脈の約20%がスイスに集中していると言われる山がちな小国である。そのようなスイスにおいてもトレーラー輸送は普及しており、米国と同じように利用されているのである。

『Wedge』2023年9月号では「きしむ日本の建設業 これでは国土が守れない」を特集しております。雑誌はアマゾン楽天ブックスhontoでもご購入いただくことができます。試し読みはこちら

新着記事

»もっと見る