住宅と工場・倉庫の混在を認める用途地域を漸次制限し、住宅が開発される地域と工場・倉庫が開発される地域をより明確に分けて行けば、中長期的にはトレーラーのような大型車両が行き来できるような環境が整って行くと思われる。
しかし、用途地域は都市計画法に基づいて概ね5年に一回見直すことになっているものの、決定権が自治体に分散されているためか、下の表に示す通り近年はほとんど変わっていないのが実情のようである。これまで日本にトレーラー輸送が普及しなかったのは、日本の国土が狭いからではなく、土地の使い方を変えて来なかったからだと考えるべきであろう。
しかしながら、工場や倉庫の立地を決めているのが中央官庁や自治体ではなく、製造業者や物流事業者であることを考えると、住宅と工場・倉庫の混在を所与の条件、あるいは運命と考えて甘受してはいけない。工場や倉庫の建設が認められている工場専用地域・工業地域・準工業地域の中から、可能な限り住宅との混在の可能性が小さい立地を選択し、トレーラー輸送を前提としたヤードや建屋のデザインを導入することが極めて重要であろう。
「物流2024年問題」まで半年を切ってもできること
そうは言っても、「物流2024年問題」まで半年を切り、即効性のある対策が求められる今、実現までに長期間を要するトレーラー輸送について筆者が語る理由が理解できない方も多くおられるであろう。
それは、現時点において即効性のある対策が求められているとは言っても、その対策は単なる対症療法であってはならず、現状の問題を本質から見直すような中長期的改革に向けた対症療法でなければならないからである。「できることからやっていくしかない」という言葉は良く聞く言葉であり、ある意味正しいが、本質的改革を目指すグランドデザインを実現するステップとしての「できること」でなければ、結局は根幹治療にならない。
前回も述べた通り、単車中心の運用を続ける限り、どんなに手待ち時間や荷役時間を短縮しても限りはある。ドライバーが貨物から離れることができるトレーラー輸送にはかなわない。
以下の写真の通り、今日では中国でもトレーラー輸送は一般化している。シャーシに載せたコンテナを含むトレーラー輸送は、貨物自動車運送のグローバルスタンダートとなっていると考えるべきであろう。
半年を切った「物流2024年問題」に対しては、短期的には「手待ち時間の改善・削減」、「手荷役・付帯作業の改善・削減」、「適正な運賃・料金の収受/負担」を推進して行かざるを得ないが、中長期的にはグローバルスタンダードであるシャーシに載せたコンテナを含むトレーラー輸送の実現を目指す必要がある。
さもなければ、日本の運輸業の労働生産性は、欧米に劣後するばかりではなく、多くのアジア諸国にも劣後することになるであろう。