2024年5月20日(月)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2023年10月5日

 この現実は、「国土も可住地も狭い日本ではトレーラー輸送は不可能」という、日本人の多くが抱いている見方・考え方と全く異なるのではないか。日本の国土は、本当にトレーラー輸送が不可能なほどせまいのだろうか。

英国は都市計画でトレーラーを普及

 日本のことに入る前に取り上げておきたいのは、英国の都市計画の歴史、特に20世紀に入ってから長期的な視点で取り組まれた歴史である。

 下の表は20世紀に入ってからの英国の都市計画の歴史を概略したものであるが、基本的に住宅地帯への工場の建設を防止することから始まり、都市開発権の国有化を進めつつ、住宅地帯の開発と工場や物流施設の開発を分離させてきたことが分かる。

 英国では18世紀に第一次産業革命が始まり、20世紀が始まる頃には、もともと工場製手工業等が行われていた古い工場の多くが改築時期を迎えており、将来の工業発展を見越した英国政府は、100年の計を以て都市計画を策定し、実施したのである。

 英国に住んだことのある方は思い起こして頂きたいが、英国においては住宅地域で町工場のような小規模工場さえ見かけることはなく、工場地域で住宅を見かけることもない。そして、住宅地域で見かける営業用車両は日本と同じような単車であるものの、広い道路と工場敷地を備えた工場地域を通行する営業用車両のほとんどがトレーラーなのである。

 英国では、可住地面積が日本の2倍近くあるからトレーラー輸送が普及したのではなく、100年の計を以て住宅地帯と工場地帯を分離して開発してきたから、トレーラー輸送が普及したのである。

 これは英国のみならず、スイスを含む欧州の国々や大きな国土を有する米国やカナダにも共通する歴史的背景なのである。それに対して日本はどうなっているか。

「工場・倉庫の地域」に住宅が混在する日本

 日本の都市計画法の地域地区には、用途の混在を防ぐことを目的として、13の用途地域が定められているが、21年3月末時点の用途地域ごとの面積配分は、以下の表の通りとなっている。

 用途の混在を防ぐことが用途地域の本来の目的ではあるものの、現実的には用途地域の半分以上(表2の黄色の部分)で、住宅と工場・倉庫が混在しているのである。多くの皆さんが経験的に感じている通り、このような準工業地域のような用途地域では、大小工場が古くから存在し続けていると同時に、マンション等の開発も進められ、トレーラーのような大型車両が行き来できる環境はなかなか現出していない。


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