2024年12月21日(土)

Wedge REPORT

2024年4月27日

「電気自動車(EV)はガソリン車とは根本的に構造が違う。部品数も少なく、誰でもこの業界に参入できる」とは、EVの黎明期から言われていたことだ。実際、現在のEVトップ企業は中国BYDと、米国のテスラなどの新興企業であり、大手自動車メーカーはEVに関していえば出遅れている状況だ。

 では、実際にEVは誰にでもつくることができるのか。極論を言えば、答えはイエスとなる。日本でも、大阪に本社を置くアスパーク社が「アウル」というEVスーパーカーを発売しているし、商用EVでは京大発のベンチャーであるフォロフライがバン、トラックタイプのEVを発売、またASF(東京都千代田区)は佐川急便向けの小型商用EVの開発を行っている。

 ただしアウルは1台4億円以上という価格であり、フォロフライとASFは共に開発・設計は自社で行うが、製造は中国企業が行うというファブレス形式だ。作れることと実際に量産して利益を上げることは別だ、とも言える。

 もう一つ例を挙げるならばソニーだろう。元々自社のオーディオや車内搭載エンタテイメント機器、センサーやカメラなどのショウケースとしてEVを製造、その後反響の高さから本格的に自動車産業に乗り出すことを決定したが、「車という人の命を預かるものを作る責任感」もあり、最終的にはホンダと組んでソニーホンダを立ち上げた。

つくれても難しいこと

 EVそのものは作れる、しかし安全基準などを考慮し、量産して利益を上げていくのは難しい。米国で数々のEVベンチャーが生まれては消えていくのも、入り口の難易度の低さと事業として継続していくことの難易度の高さを象徴しているのかもしれない。

 そんな中で、挑戦している日本企業もある。主に自動車部品を製造するサプライヤーであるTHK(東京都港区)だ。3月に東京ビッグサイトで開催されたEVイベントに自社製作のEV、「LSR-05」を展示して話題を集めた。「05」という名前から分かるように、実はこの車はTHK製作のEV第5世代である。しかもこの車には最新技術であるインホイールモーターが搭載されている。

THKのインホイールモーター

 インホイールモーターとは文字通りホイールとモーターが一体化したものだ。通常のEVでは独立したモーターとホイールがシャフトで結ばれ、モーターの動力をホイールに伝える。しかし、インホイールではモーターがダイレクトにホイールに動力を与えるため、エネルギーの無駄がない。しかもモーターのスペースが省けるため、軽量化とラゲッジスペースの確保など、車のデザインにも影響を与える。

 さらに四輪駆動にすることで、それぞれが独立駆動し、操縦安定性が向上する、高トルクと高回転を両立する、などの利点がある。パワフルかつカーブをシャープに回り切ることが可能となるのだ。

 ただしインホイールモーターは従来の独立モーターと比べてコストがかかるため、現時点ではラグジュアリーモデルへの導入が考えられている段階だ。バイクではすでに市販品もあるが、一般のEVに導入されるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 THKのマーケティングPR部、大沼亮介氏はLSR-05について「THKが車の製造に乗り出しこれを売り出そう、という考えは現時点ではない。あくまでTHK社が提供するEVパーツのショウケースとして、未来のEVへの提案を盛込んだものを車という形で表現したもの」と語る。


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