自社が持つ技術を有機的に繋げる
LSR-05に盛り込まれたTHKの技術とはインホイールモーター以外にも次のようなものがある。
- ステルスシートスライドシステムSLES=シート座面内部とフロア接合部に、LMガイド(直動案内)が配置され、コンパクトな設置面積でありながらロングストロークが可能。
- アクティブサスペンションALCS=THKのボールねじスプラインを駆動させ、路面の凹凸に対応した車高調整と姿勢制御を可能にする。高速走行時に車高を下げて空気抵抗を抑え、オフロード走行時には車高を上げる、などの対応ができる。
- MR流体減衰力可変ダンパーMRDT=THKが持つ免震技術とMR流体を組合せることで、サスペンションの減衰力を電子制御で可変させ、振動を吸収し、ALCSとの協調制御を可能にする。
- 電動ブレーキESB=バイワイヤー(電気制御)で四輪独立ブレーキを司るシステム。剛性の高いTHKのボールねじを採用することで、大幅な軽量化とコンパクト化を実現する。
- 非接触給電システムCLPS=DWPT(Dynamic Wireless Power Transfer)方式により、地面に送電装置を埋めて車両に受電装置を搭載する。ALCSで車高を下げることで充電効率が上がり、受電装置の小型化と軽量化が期待できる。
このように、自社が持つ技術を有機的に繋げることにより、効率的なEV周りの新しいアイデアが提供できる。見た目にもスマートな車に仕上がっているが、この車を製作するコストは1億円以上で、市販化は予定せず、あくまで自動車メーカーに技術を提示することが目的だ。
しかし量産によりコスト減が見込まれれば、このようにサプライヤー発のEVが生まれてもおかしくはない。このところEV減速というニュースが目立つが、中長期的に見ればやはり自動車業界はEV化の方向に舵を切っていることは間違いない。今後はワイヤレス給電への注目度も上がりそうだし、THKの技術が大きく注目されることになるかもしれない。