2024年4月29日(月)

WEDGE REPORT

2023年11月18日

 今年6月に発足したエネルギーデータ管理のオープンソースを創出する業界イニシアチブ、TEIA(Trusted Energy Interoperability Alliance)。発足当時のメンバーは日本のJERA、ドイツのE.ON、オーストラリアのオリジン・エナジー、データセキュリティなどを手がける米ソフトウェア企業のインタートラスト・テクノロジーズだが、10月には韓国のGSエネルギー社も参画を発表した。

(PhonlamaiPhoto/gettyimages)

 エネルギー(電力)は一般的にはドメスティック(国内)産業で、地産地消が原則だ。ではなぜこうした国際的な枠組みが必要とされるのか。発起企業のひとつであるオリジン・エナジーの所属で、TEIAのメンバーとして活動するキャメロン・ブリッグス氏はこう説明する。

キャメロン・ブリッグス氏

「電力を作り、それを分配して利用する、というのは確かに国内産業だ。しかし電力を作り出すためのサプライヤーを考えると、電力は非常に国際的な企業ということが分かる。例えばソーラーを考えればソーラーパネルの調達、火力発電のためのタービン、その原料となる重油など、多くの部分を輸入に頼っていることが分かるだろう。こうした国際的なサプライチェーンとのさまざまなレベルでのコミュニケーションを、一つのスタンダードで行うこと、つまり『コモン・ランゲージ』を作ることで、業務全体がスムーズに進む」。

 さらに、今後「ディストリビューテッド・エナジー」(需要と供給のバランスを考えた電力配分)が、特に再エネが発達する中で重要となる。再エネ、例えばソーラーは、春や秋には電力が余る傾向があり、夏場と冬場には不足する可能性がある。そうした電力を貯蔵し、必要とされる時と場所に適切に配分できれば、作った電力を無駄なく利用できる。

 これを推進するために注目されているのがVPP(仮想電力発電)だ。家庭用の蓄電池、EVなどに余剰電力を貯め、必要な時に放出する、という方法で、米国ではテスラをはじめさまざまなプレイヤーが実施している。テスラの場合、参加する家庭には最大で年に600ドル程度の収入があることが報告されている。ブリッグス氏の出身国であるオーストラリアでは現在EV普及率が11%程度、また早期からテスラ製のメガバッテリーを使用した大型蓄電システムの導入などを行っており、住宅へのソーラーパネル設置を全体の5割に目標設定している、という。

 こうした手法を最大に利用することで、オリジン・エネジー社では石炭火力発電の廃止を実現できる見通しで、不安定であるソーラーや風力発電を700メガワット規模の蓄電により安定供給していく予定だという。ただしVPPや蓄電による電力を最適供給するためにはアルゴリズムやAIを使ったソフトウェア、各デバイス間のコミュニケーションなども重要になる。その場合にもTEIAの提供するスタンダード・ソフトウェアが役立つことになる。


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