今年6月7日、日本のJERA、ドイツのE.ON、オーストラリアのオリジン・エナジーというエネルギー事業者とデータプラットフォーム提供企業であるシリコンバレーのインタートラスト・テクノロジーズが共同でTEIA(Trusted Energy Interoperability Alliance)の設立を発表した。
TEIAが目指すのはエネルギーマネジメントに関するデータの安全な相互運用を可能にするためのオープンスタンダード作りだ。エネルギー生産の中で機器から生成されたデータを活用するためには、各機器とデータプラットフォームの間で安全な双方向の通信を可能とする方式を標準化するとともに、一貫したセキュリティを担保しつつ相互運用を行う必要がある。TEIAは国際的に通用するスタンダードの設定と、機器メーカーからソフトウェアベンダー、エネルギー企業をはじめとしたエネルギーに関わる広範な産業に対するTEIAへの参加を呼びかけていく、という。
こうしたスタンダード作りが必要とされる背景にあるのは、再エネを始めとするエネルギー源の多様化と、それに伴うエネルギー産業に新たに参入する企業の増加だ。推進メンバーであるJERAのICT戦略部長、岩田吉央氏は「分散エネルギーが増加し、供給支障のリスクが高まる時代においては、エネルギーマネジメントにおける柔軟性、最適化がますます重要となっている」と語る。
同氏によると現在、IoT機器の規格はメーカーごとで異なっており、各々に応じた異なる認証や通信方法で自分たちのデータプラットフォームに接続する必要があることから、その接続に時間・労力がかかるとともに、その制約から自由度が制限されている状況だという。スタンダードを設けることによりこうした問題を解決し、様々なエネルギー関連のIoT機器が安全かつ容易に接続できるようになれば、中小を含めた分散エネルギーの利用が簡便化し、エネルギー供給の在り方にも影響することになる。
形態としてはインタートラスト社の子会社として運用される可能性の高いTEIAだが、近い将来エネルギー業界の黒船、と言っても過言ではないほど大きな変化を業界にもたらす可能性がある。
インタートラスト社の最高経営責任者(CEO)、タラル・シャムーン氏は今回の取り組みについてこう語る。
「エネルギー業界はエコシステム・ドリブン・インダストリー(エコシステムによって推進される産業)であり、オープンスタンダードを作るアドバンテージは、エネルギー事業者が安全かつ安定的に動作する機器を柔軟に選択でき、従来より低価格な運用を実現できる、などが挙げられる」。
一方で機器メーカー側は、自社開発で多大なコストをかけずともオープンスタンダード技術に適合した部品に加え、ハードウェアメーカが不得手とするソフトウェアの供給を受けることが容易となり、エネルギー事業者に対してその費用負担を軽減させることにつながる、というメリットがある。つまりエネルギーを生産する側、そして運用する側双方にコスト的なメリットがあり、それがエネルギー全体のコスト削減と効率化につながり、最終的には一般消費者のメリットにもつながる。