2024年4月26日(金)

From LA

2023年3月5日

 米バイデン政権は脱炭素への目標として2030年までにCO2排出量を40%削減、そして2040年にはカーボンネットゼロ(排出するCO2とそれを補うグリーン技術などの比率が同等、つまり社会全体として差し引きでCO2排出量ゼロとなる)社会の実現を目指す。

 そのために重要となるのが再エネの存在だ。米国では今急速な再エネ導入及び節電推奨が進んでいる。昨年発表されたインフレ抑制法(IRA法)の中にも、EV購入の際の補助金だけではなくさまざまな住宅補助金が含まれている。

 例えばEVを購入するのに必要な充電設備を自宅に設置した場合、最大30%、自宅にソーラーパネルを設置した場合も最大30%、また集合住宅建設の際にすべての部屋にスマートサーモスタット(室温調整)を導入すると、住宅の規模にもよるが最大で90万ドルの補助金が受けられる。また「エナジー・スター」と呼ばれる節電機器などを備え付けた集合住宅の場合、最大で部屋ごとに2500ドル、戸建住宅建設の際にゼロ・エネルギー・レディ(ZER、ソーラーや節電機器などにより送電網に頼らないエネルギー供給が可能な状態の住宅)と認定された場合最大で5000ドルの補助、などだ。

ピーク時の電力不足

(elenabs/gettyimages)

 しかし何よりも重要なのは個々人の意識を変革し、再エネ社会を実現するために節電を徹底させる、という点だろう。特に夏場や冬のピーク時の電力不足をどう解決していくかは重要な課題の一つだ。

 この問題にゲーム感覚のアプリで挑戦しているのが「グリッド・リワード(ご褒美)」社である。現在テキサス、カリフォルニア、アリゾナなどの一部でサービスを提供しており、今後ますます広がることが期待されている。

 その仕組みだが、アップル、アンドロイド双方で、無料でアプリがダウンロードできる。アプリは利用者が使用している電力会社のアカウントと連動される。つまり電力会社がグリッド・リワードと提携している必要があるが、賛同する電力会社が現在どんどん増えている状況だ。

 アプリでは毎日の電力使用状況、昨日と比べて今日は電力使用が何%多い、などの情報、毎月の電力料金、付近の大きさなどが似通った家と比べて電力使用量が多めか少なめか、電力消費量を抑えるためのヒントなどが確認できる。そして「年間のリワード(ご褒美)額の予想」という項目がある。

 ではどのようにすればリワードを手にすることが出来るのか。それが電力ピーク時にアプリに送信されるお知らせに関わってくる。例えば夏の午後、電力使用がピークになり電力不足が予想される場合、利用者のアプリに「節電のお願い」というプッシュ通知が来る。

 利用者はこれを見て「エアコンの温度設定を少し上げる」「使用していない電気機器のプラグを抜く」「無駄な照明などを消す」など、個人で考えられる節電を実行する。これにより電力ピークの需要を地域全体で減らし、電力不足を回避する、という考え方だ。

 さらにこれが成功してピーク電力需要が減少した場合、利用者は個人の電気料金を節約できるだけではなくそれによるリワードが受けられる、という仕組みだ。上手く利用している人の場合、年間で100ドル以上のリワードが受けられている、という。


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