2022年の米国の自動車販売に占める電気自動車(EV)の割合は6%と、欧州や中国に比べると低い数字にとどまっている。ただし一昨年比では52%の上昇で、中でもテスラモデルYは25万台以上を売り上げ、米国のベストセラーカーで初めてトップ10に食い込んだ。
今年はいよいよテスラのサイバートラックが発売になることもあり、米国で常に販売のトップ3を占めるピックアップトラック(フォードFシリーズ、GMシボレーシルバラード、ラムピックアップ)の座をも脅かす存在になるかもしれない。
EV販売禁止法案
そんなEV化の流れに対し、「2035年から州内でのEV販売を禁止する」という法案を成立させよう、という動きがある。米西部のワイオミング州だ。同州の州議会議員6人が連盟でこの法案を提案し、議会で可決するよう求めているのだ。
当然この6人は共和党であり、従来型の産業の衰退への危惧を訴えている。ワイオミングはイエローストーン国立公園で有名な森林に恵まれた州で、広さは全米で10位ながら人口はわずか58万人、米国で最も人口密度の低い州でもある。
提案では「石油と天然ガスはカウボーイ・ステート(ワイオミングの愛称)の重要な産業であり、州の収入の多くを占めると同時に大勢の雇用を抱える産業でもある。ワイオミングには広大な土地に張り巡らされた高速道路があり、それに対するEV用チャージインフラは極めて不足している。また州の電力網はEV化に対応できるほど強靭ではない」とEV化に反対する理由を述べている。
元々ワイオミングは自動車に対してユニークな政策を取る州として知られてきた。一時は高速道路の速度制限を撤廃していたこともある。そのため「米国のアウトバーン」などと呼ばれたりもしたが、人と起こす事故よりも道路を横断する動物をはねる事故の方が多いという場所なのである。
2035年といえば、カリフォルニア州がガソリン車及びハイブリッド車の新規販売を州内で禁止すると、宣言した年である。すでにオレゴン、ワシントンの両州がこれに追随する動きを見せており、北東部のニューヨーク、マサチューセッツ、バーモントなども同様の法案を可決させる見込みだ。隣国のカナダは国全体で35年からのガソリン車販売禁止を掲げている。