2024年12月22日(日)

From LA

2023年1月11日

3社共同のコンセプト(ユーチューブ動画キャプチャー画像)

 フランスに本社を置く自動車部品メーカー、Valeo社(ヴァレオ2021年の売上173億ユーロ、グローバル従業員10万3000人)が、CES2023で行った発表では、自動車の電動化と自動運転化を推進するさまざまな技術に加えて、サプライヤーとして培った技術を周辺に発展させるアイデアが含まれていた。

 その中でも注目されるのは、日本のNTTデータ、スイスのembotech社(エンボテック、自動運転のソフトウェアを開発)と提携して立ち上げられた新会社、ven.aiだ。これはインフラ側からセルフパーキングを可能にする、という技術である。

 セルフパーキングはテスラなど自動運転機能を持つ自動車メーカーが喧伝する機能の一つだが、ven.aiはこれを自動運転機能を持たず、コネクテッド機能のみを持つ車に対し、パーキング施設のインフラにセンサーなどを設置することで実現する。

 コネクテッド機能を持つ車にはSIMカード(Subscriber Identity Module、スマートフォンなどに入っている加入者識別モジュール)、チップなどが搭載されている。これらをインターフェイスとして信号を受け取り、インフラ側のセンサーによるガイドで車が自動的に走行し、定められた場所にパーキングする。

 この機能は、例えば駐車場、自動車工場内での車の移動、物流センター、車の販売やデリバリーなどに応用できる。さらに機能を加えて車が自動的にチャージステーションに移動し、充電を行った後に別の場所にパーキングする、なども可能となる。

 すでにBMWがドイツ国内の製造工場での導入を決定しており、製造ラインから完成車を自動的に待機駐車場への移動させるシステムが構築される計画だ。人件費コストを下げると同時に、工場内での安全かつ迅速な製品移動が可能となる。

 ヴァレオの車内センサー、カメラなどは世界初のレベル3自動運転に認定されたホンダレジェンド、メルセデスSクラスおよび、電気自動車(EV)版のEQSに搭載されている。さらにヴァレオでは、BMWにADAS(Advanced Driver Assistance Systems、先進運転支援システム)ドメインコントローラー、センサー、ソフトウェアを提供している。

 このように自動運転化に向けたセンサーなどの技術を持つ企業、ソフトウェア開発とマネジメントに特化したエンボテック、そしてシステムインテグレーターとしてNTTデータが組むことで、インフラ側から一部自動運転を可能にすることができるのだ。

 利点としては自動運転機能を持たないEVやガソリン車両であっても、通信機能さえあれば、システムに組み込むことができるという点だ。

 特にEVのバッテリーチャージに関しては、フォードがロサンゼルスの企業と組んだロボットチャージャーなど、ショッピングモールなどのパーキングで買い物中にロボットが移動してチャージしてくれるというシステムが実験的に導入されているが、ven.aiのシステムならば、車が自動的にチャージステーションに移動し、充電後に元の場所に戻したり、洗車の必要があればその場へ移動したりすることも可能となる。インフラを提供する側にさまざまなサービスの機会が生まれる。


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