米国では今年に入り8%以上という高いインフレ率が続いているが、そのことにより米国人の負債額が過去15年になかったペースで進んでいる、と連邦準備銀行が報告した。
今年6~9月期の米国人が抱える負債額は昨年比で3510億ドル増加となったが、この負債の増加ペースはリーマンショックによる景気後退が始まった2007年以来だという。また同期に負債総額は16兆5000億ドルに到達した。これも昨年比で8.3%の増加となる。
負債内容で最も多いのは住宅ローンで、昨年から1兆ドル増えて11兆7000億ドルとなった。住宅価格が高騰していること、今年に入り連邦準備制度理事会が4度の0.75%の金利引き上げを行い、現在のローン金利平均が7%に到達したことも大きい。
米国ではもともと固定よりも変動金利型のローンが人気だったが、数年前までは住宅ローン金利は3%台と低かった。このため変動金利に設定した人に特に重くのしかかっている。
次に多いのがクレジットカード・ローンで、負債総額は9300億ドル。昨年比で15%も増加しており、さらに金利が上がっていることから今後ますます負債額が増えることが懸念されている。
このクレジットカード・ローンの増加部分の多くはインフレの影響によるものだ。物価が上がり、蓄えを削りながら生活する人が増えている。賃貸価格も上昇しているため、生活のための支出としてクレジットカードを使い、返済が滞りがちになっている現状がある。
追い打ちをかける自動車の販売価格高騰
さらに多くの米国人にとって必要不可欠である車の価格がコロナパンデミックによる物流の途絶えなどから急激に上がっていることも大きい。米国の今年の新車価格平均は4万8000ドルだったという。
これにローン金利の上昇もあり、車のローンもまた人々の生活に重くのしかかっている。自動車ローンの総額は1兆5200億ドルで、昨年比で5.6%の上昇となっている。
ただしローン破綻による住宅差し押さえ件数は増えてはいるものの、2007年から始まったサブプライムローン破綻時に比べると低めに抑えられている、という。
ここから見えてくるのは消費者が物価高に苦しみながら、クレジットカード・ローンの残高を増やし貯蓄を減らしながらも、なんとか生活の質を保とうと努力している姿勢だ。