2022年12月9日(金)

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2022年11月22日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

スタグフレーションの可能性

 この状態が続くと消費の冷え込みが起こり、スタグフレーションを起こす可能性もある、と指摘するのはバンク・オブ・アメリカのリサーチャーだ。

 特に株価が今年に入り大きく下落していることから「今後数年でスタグフレーションの脅威が増す」と考えられている。さらにバイデン政権は「米国経済は景気後退を起こさない強さを維持している」と主張しているが、来年以降に景気後退が起こる、と予測する経済学者が増えている。

 米国経済は70年代から80年代始めにかけて深刻なスタグフレーションを経験している。金融引き締めのため、一時金利が19%まで上昇したことがあるのだ。これに似た形でスタグフレーションが起こる可能性がある、と指摘するのはドイツ銀行のアナリスト、ヘンリー・アレン氏。現在米国が行っている金利の引き上げがインフレに歯止めをかけられなければ、さらなる金利引き上げが行われる可能性があるためだ。

 より深刻なシナリオを提供するのは米国のトップ経済アナリストであるモハメド・エル・エライン氏で、「米国はすでにスタグフレーションの入り口にある」という。同氏によればインフレはすでに21年から始まっており、政府による金利引き締めはタイミングを誤っていた。一度金利引き締めに動くと引き下げが困難となり、負のスパイラルに陥る、という。

急減する住宅成約件数

 実際に米国の住宅取引の成約件数は急激に降下しており、住宅価格の下落も始まっている。ローン負債を抱えた人が住宅を売却しても負債が残る、というケースが増えれば、現在の米国人の負債総額はさらに増えることになる。

 リーマンショックから立ち直るのに7、8年を要したことを考えると、来年以降に米国が景気後退に陥れば回復には相応の時間がかかるだろう。

 現在の状況にはコロナによる物流の混乱やウクライナ問題が深く関わっているのは事実だが、どちらもすぐに解決の可能性が低い以上、米国が景気後退に陥る率は高まっている、といえる。

  
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