今回のCES2023では、ワールドデビューとなる新しい電気自動車(EV)コンセプトを発表したメーカーが多かった。中でもBMWとステランティスは基調演説の中でそれぞれ斬新なアイデアを持つ未来的なEVを披露した。
BMW「iVision Dee」
まずBMWだが、iVision Deeと名付けられたコンセプトは、同社が開発した次世代型EVプラットフォーム「ノイエ・クラッセ」を用いている。ヴァレオ社製のADASドメインコントローラーを搭載し、自動運転からコミュニケーション、エンターテイメントをカバーするいわば「デジタルの心臓」を備えた自動車だ。
DeeのDはデジタルの象徴であり、そこにeのエモーションが加わる。同社に搭載される予定のAIは「人と友達のように会話する」のが特徴であり、さらにeインクによりフルカラーで車体の色が変化させられることで、感情を表現する自動車となる。
BMWの基調演説ではアーノルド・シュワルツェネッガー氏が登場する短編映画が流され、そこで現在と過去を行き来しながら当時の自動車との思い出、それが現代にどう展開するのか? というストーリーだった。その映画に登場したのが1980年代の人気モデル、3シリーズだった。
Deeの少々クラシカルで角張ったデザインは、3シリーズへのオマージュとも言える。コンセプトであるためこのままの形で市販されるかどうかは未定だが、曲線が強調される現代のデザインの中で、こういうノスタルジックな自動車が登場するのも良いと感じられた。
ビッグ3のピックアップEV出揃う
一方のステランティスでは、クライスラー・ブランドからラムピックアップトラックのEVバージョンが登場した。米国では年間に最も売れる車の上位をピックアップが占めており、フォードがF150ライトニングを登場させ、GMもシルバラードのEVバージョンを出した。ラムが最後になったが、これで旧ビッグ3の人気ピックアップがすべて揃ったことになる。
ここに今年発売予定のテスラサイバートラック、リビアンR1T、ローズタウン「エンジュランス」などのラインナップが揃い、EVピックアップトラック市場が熱気を帯びそうだ。
本能でコントロールできる
しかし、ラムピックアップトラックよりも注目を浴びたのが、プジョーブランドから出されたコンセプトINCEPTIONだ。スーパーカーのようなワイルドな外観、車高がわずか1.34メートルというレースカーのようなプロフィール。さらにハイパースクエアというステアリングコンセプトが斬新だった。
このステアリングには4つのリングが備えられているが、それぞれがタッチパネルとなっている。親指をここに入れ込んで滑らせることにより、各ゲージ操作などができる。まるでゲームコントローラーのような操作性、本能的にコントロールできるなど、ゲーム会社であるソニーがこうしたステアリングの発想ができなかったのが残念と思えるほどの斬新製と使い勝手が感じ取れた。