2024年12月6日(金)

From LA

2023年1月25日

EV禁止に勝算はあるのか?

 今回のワイオミングでの動きはこの真逆を行く、EVの販売禁止という内容だが、果たして勝算はあるのか。

 まず、GM、フォード、ステランティスがそれぞれ35年以降は米国内でガソリン車の製造を取りやめるという発表を行った。グローバル市場向けにはガソリン車を残すものの、国内向けでは全電動化を目指す、というものだ。

 こうなるとワイオミングでは買える車が非常に少なくなる。特に需要が高いのはピックアップトラックだが、これもトップ3がすべてEVモデルを発表し、その比率は今後ますます拡大するだろう。

 また米国では「ガスレンジの使用を禁止する」という動きが見られ、ガス点火の際の一酸化炭素や二酸化窒素などの毒性が議論されるようになった。石油の使用も全体としてのEV化が進めば減少するため、石油と天然ガスは州の財源として先細りが懸念される。

 ワイオミングの動きは抵抗勢力もしくは政治的スタントと捉えられているが、一方で同様に財源を化石燃料に頼り経済的に豊かではない州にはびこる不安を代表したものともいえる。多くの中西部の州が未だに石炭発掘時代の古い産業構造を変化させることができず、自動車工場が今後閉鎖されれば職を失うという危機感を抱いている。

 大手自動車メーカーからの揺り戻しも起こる可能性がある。昨年の米国でのEV販売台数を見ると、1位がテスラモデルY、2位がモデル3、3位がフォードマスタングマッハEとなっている。続く4位がモデルX、5位がシボレーボルト(EVとEUVを合わせた数字)である。シェアで見るとテスラが48.4%、フォードが7.8%、GMが6.3%となる。しかも今年に入りテスラが大幅な値下げを行ったことで、この差はさらに開きつつある。

 こうなると、一旦はEV化に舵を切った大手メーカーが、EVでのシェア奪還は無理であるとの判断から、急激なEV化に反対する側に回る可能性がある。例えばGMは国内の4つの工場で8億ドル以上の投資を行い新型のV8エンジン開発を行うと発表した。もし本当に35年からガソリン車販売を停止するのであれば、わずか12年間のために行うには額の大きい投資だ。同時にGMは4カ所目となるバッテリー工場建設を無期限延期にしたとも伝えられている。つまりEV需要の低さとマージンの少なさから、EV戦略を見直す動きに転じたとも考えられる。

 州政府にとってはガソリン税の減収は経済的な打撃となるし、道路補修費用などをどこから捻出するかなどの問題も今後浮上するだろう。ワイオミングの極端な法案提出の動きは、早急すぎるEV化への一つの警鐘となるかもしれない。

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