テスラが本社をカリフォルニア州フリーモントから、テキサス州オースティンに移転したのは2021年。同州にはスペースXの製造拠点がある他、トヨタが北米本社をダラス近郊に移転するなど、大企業の流入が目立つ。さらにテスラのライバルである電気自動車(EV)スタートアップ、リビアンもオースティンにサービス・デリバリーセンターを開設した。
オースティンはテキサス州の州都であり、テキサス大学のメインキャンパスがあるなど、人口の平均年齢が若い都市としても知られる。オースティン市によると1日あたりの流入人口は昨年から100人を超えており、今後の発展が見込まれる場所だ。
オースティン・エナジーは市が運営に関わる公営電力会社で、公営の電力会社としては全米で3番目の規模を誇る。現在同社では積極的な再エネ導入とEVの普及を行っている。
2月にオースティンで開催された、パークス・アソシエイツ社主催の「スマート・エネルギー・サミット」で、オースティン・エナジー社のEV及び新興テクノロジー担当部長であるカール・ポプハム氏が基調演説を行った。市が主体となるEV導入のさまざまな手法についての話は、今後脱炭素を目指す多くの自治体にとって有用な内容だった。
まず、市の公用車におけるEVの導入だが、2013年からはじまり、毎年順調にその数を伸ばしている。特に22年から23年にかけては8.11%の増加となり、現在の台数は355台。また22年には316台のEV公用車が稼働したが、ICE(内燃機関)車両と比較した場合の燃料費などのコスト節約額は140万ドルだったという。2026年にはこの節約額が350万ドルに達する見込みで、当初の予定よりも導入と節約が早いペースで進んでいる。
また同社ではev.austinenergy.comというサイトを開設しているが、このサイトの訪問者は月に1万件を超える。特に今年に入ってからは1日に1000件以上のアクセスが続いているという。
サイトではリアルタイムのEVのメーカーごとの在庫、コンパニオン・アプリとしてディーラーにアクセスできる機能、国・州・自治体レベルでのEV購入インセンティブ情報、各モデルの比較と購入コスト計算、公共の充電ステーションマップなどが用意され、ワンストップで各メーカーのEVについて学び、購入に向けてのアシストが利用できるようになっている。
そもそも石油王国として知られるテキサスだが、最近は全米で最も再エネ推進が進む州としても知られている。21年の実績では電力ソースとして天然ガスが42%、風力が24%、石炭19%、原子力10%、ソーラー4%だ。