2024年12月24日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年5月1日

 TSMC(台湾積体電路製造)。

 国際情勢と世界経済を左右する戦略物資となった半導体、その製造世界シェアの60%を担う世界最大のファウンドリ(半導体受託製造)だ。スマートフォンやパソコン、AI(人工知能)向けに必要な先端半導体に限れば、そのシェアは90%以上に達する。今や世界で最も重要な企業の一角を占める存在となり、株式の時価総額も世界トップ10入りを果たした。

世界最大のファウンドリ(半導体受託製造)である台湾のTSMCから日本が学べることとは(AP/アフロ) 
TSMC 世界を動かすヒミツ
林 宏文 (著), 野嶋 剛 (監修), 牧髙光里 (翻訳)
2,970円(税込)

 日本・熊本に工場を設立したこともあり、日本メディアでもその企業名をたびたび見かけるようになったTSMCだが、どのようなポリシー、戦略、企業文化を持つ会社なのかというキャラクターについてはよく知られていない。設計企業の委託を受けて半導体を製造する、いわゆる“黒子”の役割に徹してきただけにメディアへの露出をひかえていることが要因だ。

 そうした中で、TSMCの顔が見える本が出版された。林宏文『TSMC 世界を動かすヒミツ』(野嶋剛・監修、牧髙光里・訳、CCCメディアハウス、2024年3月)がそれだ。

 筆者は台湾・経済誌の記者として30年にわたり、TSMCと台湾半導体産業の歴史を追い続けてきたベテランで、TSMCがどのような企業なのか、その経営陣はどのようなキャラクターなのかを豊富なエピソードから肌感を伝えることに成功している。

 今回、来日した林宏文氏に改めてTSMCの強み、弱点、そして日本進出を含めた今後の展望について聞いた。


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