チョコレートの美味しさを追求しながらSDGs(持続可能な開発目標)も追求しているフランスのチョコレートブランドがあります。「ヴァローナ」。主にプロ用のチョコレートを作るメーカーです。
プロが考える持続可能な世界
フランス料理のデザートや、パティスリーで販売されるお菓子に使われるチョコレートのことをご存知でしょうか?
「チョコレート」と言いますが、スーパーで売られているチョコとは全くの別物。「クーベルチュール」と呼ばれる製菓用のチョコレートは、カカオ分が35%以上、カカオバター31%以上など、厳しい国際基準を満たした上に、加熱、加工などを前提としたお菓子作りに適したチョコレートです。
これを「専業メーカー」などがレストランやパティスリーに卸し、レストランやパティスリーは仕入れたそのチョコレートを溶かし加工してデザート他を作ります。
このクーベルチュール・チョコレートの中でも、1922年創業のフランスの「ヴァローナ」のチョコレートは格別。1986年に発売した「グアナラ」はカカオ分70%いうハイカカオで、しかも美味しいチョコレートということで衝撃を与えました。口に含むと、深い苦みを感じながらも、豊潤な香り、蕩けかた、ベタつかない甘み。チョコレート感が変わります。という凄い一品ですが、一般の方には、ほとんど知られていません。
理由は簡単です。プロ向けがメインなので、チョコレート愛好家や家でお菓子作りをする方々以外の一般の消費者にはあまり知られていないのです。「プロ用」と言うとメディアはすぐにでも持ち上げますが、それはほんの一部、実際はまだまだ知られていないおいしいものがあるのです。
そのためには「高品質なカカオ」を入手することが重要です。ヴァローナが、原材料の高品質なカカオを入手するために取った方法は、「持続可能な高品質カカオ調達」です。
具体的に何をしているのかというと、カカオハンターと呼ばれる人が世界中の農園を訪れ、良いカカオを探し、さらに現地の生産者とともにカカオの栽培や育成に従事するのです。農園とは「長期的なパートナシップ契約」を結びます。市場に出たものを購入するのではなく、農園と良いカカオを育てる道を選んだわけです。
熱帯地方の商品作物が持つ問題
カカオは某メーカーの商品名となっているアフリカのガーナが有名ですが、これは日本がガーナから輸入している量が最も多いからです。国別カカオ豆生産量(2018-2019推定 出典:国際ココア機関(ICCO)カカオ統計2018/19第3刊)では、コートジボアール、ガーナ、エクアドルがトップ3。これにカメルーン、ナイジェリア、インドネシア、ブラジルと続きます。
カカオは、ほぼ赤道を中心に南北20°のカカオベルトと呼ばれるところで採れます。
カカオベルトは、コーヒー、天然ゴムとも重なっています。カカオの国際取引は、コーヒーや天然ゴムと同様に「先物市場」での取引価格をベースに決定されるため、変動が大きく、カカオ生産者の収入は安定しません。また、カカオの市場取引は「アンフェアー」で、中継ぎ業者によって結構、搾取されます。これは植民地時代の話ではありません。現代の話です。
カカオだけでなく、コーヒー、バニラビーンズなど、カカオベルトと同じエリアで取れ、嗜好品で、高い値で取引される商品作物は、同じ課題を抱えています。「量から質への変換」という問題です。