新しい〝付加価値〟最前線

2022年5月12日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

 2014〜15年頃、各局テレビは高級炊飯器を買い込む中国人観光客を映していた。いわゆる「爆買い」だ。裕福層が日本に来て、親戚一同に買って帰った。日本で爆買いをしたのは、中国で買うより安かったのと、日本に行ってきたという自慢できるお土産だったからだ。

 一方、中国政府も影響を受けていた。爆買いによって、莫大なお金を日本に落とすことになったからだ。このため2016年頃から、入国関税が厳しくなり、高額な炊飯器から、ドラックストア系の消費へ爆買いはシフトした。

 同時に、炊飯器の転売屋が出現した。旅行者が富裕層から普通の層に移行したため、高価な炊飯器が買えない人に、炊飯器を持たせ、税関を通過させるようにした。旅行客の客層が変わったことを利用した格好だ。これがコロナ禍前の状況だ。

かつての爆買い(jaraku/gettyimages)

炊飯器のカテゴリー分け

 日本の炊飯器は、熱源と加熱方法により3つに大別される。「電熱ヒーター」をマイコンで制御する「マイコン」と呼ばれるグループ、「IH(電磁誘導加熱)」を熱源に使っている「IH」グループ。そして熱源は「IH」で「圧力システム」を組み込んだ「IH+圧力」と呼ばれるグループ。

 価格順に並べると、日本市場は、

  • 1万円以下が「マイコン」
  • 2万円以下が「IH」
  • 4万円以上が「IH+圧力」

 フラッグシップである最上位機種のモデルの価格差は、多くの場合、内釜の差だ。内釜は、蓄熱性が高く、微妙な温度コントールを可能にしなければならない。

 この内釜に各メーカー技術てんこ盛り、すごく技術も、コストも高い。象印の南部鉄器、タイガーの土鍋、三菱の炭など、色々なメーカーが覇を競っている。

コメへの執着がすさまじい日本市場

 総需要は500万台前後。各グループの台数シェアだが、「マイコン」が30%、「IH」が33%、「IH+圧力」が35%。(四捨五入しているため、総計:100%にならない)。

 普通の市場であれば、安価なグループが一番多く、価格が上がるにつれ少なくなるが、炊飯器に関してはまるで逆だ。日本の場合、炊飯器はストイックなくらい、「美味く炊けること」が目標となる。それほど日本人は主食である美味いコメに対して、金を惜しまない。スーパーに売っているコメも銘柄米が多い。ちなみに銘柄米として登録されているのは800種以上。コメも改良に次ぐ、改良。寒さに強くするのと、食味が改良されている。日本はコメに関する限り、嗜好品を作っていると言われてもおかしくないレベルだ。

中国市場

 中国の人口は2022年で約14.5億人。同年日本は、1.3億人なので、ほぼ10倍の人口を持つ。炊飯器の総需は5700万台/年という市場だ。ただ中国には公式に入手できる統計データがないので、あくまで参考値だ。

 中国の炊飯器は、日本にない「機械式」も含め4つのグループがある。機械式というのはヒーターの管理を機械で行うもので「マイコン」の下位機種に位置する。この「機械式」と「ヒーター」を合わせたシェアが90%、「IH」が6%、「IH+圧力」が 3%。日本と全く構成が異なる。この3%が富裕層、6%が準富裕層だ。

 日本メーカーの炊飯器を支持してくれているのは、この「IH」「IH+圧力」のユーザーだ。彼らは、短粒米の味に目覚めた人で、中国で多く栽培されている長粒米でなく、輸入、もしくは中国内で栽培されている、いわゆるジャポニカ米を買って食べる。日本的な感じの、ご飯とおかずの関係で、食事をするそうだ。

 要するに、中国では約10%に日本メーカー製の炊飯器が支持され、残り90%は中国メーカー製を購入するということだ。

中国、炊飯器のビッグ3と「機械式」「マイコン」市場

 中国炊飯器のビッグ3は、「Midea Group(マイディアグループ、美的集団)」、「Supor」、「Joyoung」の3社。

 Mideaは、東芝の白物家電部門を買収した先で、規模的には、ハイアールに次ぐ、メーカー。世界的にも大きい会社だ。ホームページでは、技術的な訴求もきちんとされており、日本メーカーをキャッチアップしようとする気概が感じられる。

 ただし、基本的にはこれら3社は、やはり「機械式」「マイコン」の中国市場を狙いっている。日本の場合は、「マイコン」の一部モデルを除き、特殊な機能は付けない。しかし、中国市場では、「多機能」、そして低糖質を始めとする「健康的なご飯」が流行っており、コメの美味さを極限まで追求している日本とは、異なるニーズがある。

 中国市場では、日本メーカーの製品は、関税の関係で、日本市場の倍位の値付けがされる。しかも、ユーザーの考え方が、日本とは異なるところもあり、日本のメーカーを支持してくれる「IH」と「IH+圧力」の購買層に対してはともかく、幅広いターゲット層でそれなりの地位を得るには、製品のローカライズ化を含め、工夫する必要がある。

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